「Extreme Ownership」読了
- 2024.03.17 Sunday
- 13:13
「Extreme Ownership: How U.S. Navy SEALs Lead and Win」は元米海軍特殊部隊・ネイビーシールズ指揮官のジョコ・ウィリンクとレイフ・バビン共著によるリーダーシップ論である。
本書の著者達はイラク戦争の最中、ファルージャやラマディといった最も激しい戦闘が行われた地域に派遣された。敵のテロリストは民間人の中に紛れ、建物の陰に隠れ、無数にある窓のひとつからいきなり銃口を出して射撃してくる。手榴弾を投げてくる。建物はそれまでの戦闘でがれきになっている。わかりやすい看板など掲げていない。このような過酷な状況においてネイビーシールズは部隊員とイラク兵を率いてミッションを成功させなければならない。
戦闘において、間違いは生と死を分ける。本書はイラク戦争におけるネイビーシールズの経験から得られた貴重な教訓をもとに、戦場において、そしてビジネスにおいて、リーダーとはどうあるべきかをまとめたものである。
世の中は自分の思うようにいかないことばかりである。部下はいうことを聞いてくれない。頼んだことをやってくれない。上司は動いてくれない。許可を出してくれない。物事は想定通り進まない。あちこちで不意の事故が起こる。そんな時、人はそれらの現象を並べ立てて他人を責めがちである。
「自らを責めよ = 自分のものとせよ "extreme ownership"」 ・・・ 本書の最も強烈なメッセージはこれである。人がこれこれをやってくれない、ではない。人がそれをやることを促すために自分は何をしたのかを問え、と。部下が動いてくれないのではない。自分がそもそもミッションを信じていないのだ、と。上から「やれ」といわれたから下に「やれ」と言っただけ。それで下の人間が動くわけがない。上司が動いてくれない、許可を出してくれない、ではない。上司が動けるために自分はどのような情報を伝えたのか、許可を出せるためにどのようにコミュニケーションをとったのかを問え、と。
著者はこの中心テーマを支える教訓を本書においていくつも展開している・・・ 個人をエゴを抑えよ、援護射撃と進撃を使いこなせ(チームワーク)、シンプルにせよ(複雑なメッセージは伝わらない)、優先順位をつけて断行せよ、権限委譲せよ(細事に首を突っ込みすぎず、かつ離れすぎず)、上にリードし(上司の視点で考え、配慮と敬意をもった行動)、下にリードせよ(末端まで理解できる伝え方)。
本書はイラクでの戦闘エピソード、その教訓、そしてそれをビジネスの現場でどう生かすか、という流れで説明をしている。
あの遠くの建物の窓にテロリストらしき者の陰が見える。今撃たなければその建物の近くにいる米陸軍の見方がやられる。だが部下のスナイパーはそれがテロリストであるとの確信が持てない。米陸軍の司令官から連絡が入り、「何をもたもたしている。早く撃て!」とのプレッシャーがかかる。それに抗し、「建物を再度確認を!」と要請する。陸軍司令官は苛立ちをにじませつつ兵士達を送り出す。すると、なんと銃構えるスナイパーの目に「テロリスト」のいるはずのビルから米陸軍兵士が飛び出すのが見えるではないか。スナイパーに見えていた「テロリストらしき者」は見方の米陸軍であった・・・プレッシャーに屈して「撃て」と命令していたら、同士討ちの悲劇が起こるところであった。
特殊部隊員になるための地獄の訓練をくぐり抜け、破壊により混沌としたイラクの市街地で敵を殲滅しテロ活動の証拠を集めつつ部下の兵士達の命を守る ・・・ このような極限を生き抜いてきた戦士の言葉であるが故に説得力を持つ。