国有化に向かう東電と愚かな民衆
- 2013.07.21 Sunday
- 18:22
東電が管理職に一律10万円支給 退職者急増でつなぎとめ
24年度の自主退職者712人のうち管理職やその候補者は約4割を占めた。 22年度は約2割で、管理職の流出が加速している。 東電幹部は「一度きりの臨時支給で退職を思いとどまってくれるかは分からない。ただ、努力に少しでも報いたい」としている。
我々の生活は電力無しには成り立たない。 誰かが電力を供給しなければならない、というか、誰かに電力を供給”してもら”わなければならない。 国内で調達できなければ海外から調達するしかない。 問題はどこから輸入するかである。 韓国か、北朝鮮か、ロシアか、中国か… いずれにしても数少ない選択肢は不道徳なものである。
電力は国内で供給するのが最も安価であり、安全であり、効率的である。 だから東電が民間企業として存続しているのである。 だが自らの首をしめる愚かな我々国民によって民間企業としての東電は危機に瀕している。 安定的な電力供給を行い、空前絶後の大震災と津波にも耐えた原子力発電所を運営してきた東電、その東電に対する我々国民の仕打ちは酷いものであった。
3.11以来、メディアは東電を悪の権化として描いた。 東電社員であることは恥となった。 東電幹部であることは犯罪となった。 東電で給料をもらうということは、まっとうに報酬を得るのでっはなく、悪事をはたらいてカネをせしめる行為とみなされた。
東電たたきが荒れ狂う中、他で仕事が探せる人間であればさっさと辞めて晴れて「善良な会社」で働きたいという思いがよぎったはずである。 肩身の狭い思いをしている社員の家族の思いも同じであったはずである。 だから実際に管理職の退職が相次いでいるのである。 重要な地位の社員が退職するということは組織の頭脳が流出するということである。
このままでは立ち行かなくなるのは当然の成り行きである。 東電という組織の崩壊を何とかして回避しようと、能力の流出を少しでもくい止めるために10万円という雀の涙程度のカネを支給したのであろう。 注目すべきは東電内部での臨時支給ではなく、それをニュースとして報道するメディアの意図であり、それを受け止める国民の反応である。
このまま行けば東電は完全に国有化される(既に実質的に国有化されている)。 国営企業となった東電は肥大化し続ける官僚機構の一部となる。 そしてかつての国鉄や郵便がそうであったように、富を産むことをやめ、壮大な収奪の一翼を担うようになる。 収奪されるのは我々国民であり、我々の子孫である。 収奪のシステムを構築した人間が死んだ後も、次世代を担う人々から収奪しながらそのシステムは末永く生きながらえるのである。