「トランプ・ロシア疑惑」暴かれるオバマ政権の罠

  • 2018.03.31 Saturday
  • 14:53


米国・保守の努力により「トランプ・ロシア疑惑」に関する真実が明るみにされつつある。だが既存メディアを見たり読んだりしている限りは混迷している様子しか分からない。

警察官から大統領シークレットサービスを経ていまや全米の人気保守ポッドキャスターとなったダン・ボンジーノ(Dan Bongino)がここ数カ月詳細にこの「疑惑」を追跡し、その根拠をショウ・ノートにリンクしている。そこで知り得たことを簡単に記してみる。

結論として、この「ロシア疑惑」はトランプとロシアとの共謀ではなく、逆に大統領選挙時のオバマ政権がトランプ候補者に対して仕掛けたスパイ活動であり、トランプが大統領選に勝利した後においては政府内の民主党派によるトランプ政権崩壊を狙った策動である。その策動は今日もロバート・ムラー特別検察官によって執拗に継続されている。

それが意味するのは、時の政府が対立する党の候補者に対してCIA(及びCIAが提携する英国諜報機関)やFBIといった政府権力を使ってその動きを阻もうとし、更にはその政府の生き残りが現政府の転覆を図ろうと画策し、しかもそれを(大部分が左翼の)主要メディアが報じようとしないという状況は前代未聞であり、建国の理念や法治主義が危機に直面しているという事である。

その目的は、未だに証明されずにいる「証拠」によって存在しない「トランプとロシアとの共同謀議」を捏造し、トランプ政権を揺することでオバマ前政権の対露融和政策、民主党議員によるロシアとの共謀、ヒラリー・クリントン前国務長官のメール・サーバー問題(機密情報の流出)、オバマ前政権が便宜を図ったロシアのイラン核開発補助、といった事実上のロシアとの共同謀議から国民の目と意識をそらせることに他ならない。

どのようにして始まったのか。

 

2016年5月、トランプ選挙陣営の外交アドバイザーのジョージ・パパダポラスと元オーストラリア外務大臣のアレクサンダー・ダウナーとがロンドンのバーで呑む。パパダポラスはダウナーに「俺たちはヒラリーにとって”都合の悪い話”をロシアのソースから得ている」と語る。ダウナーはそれをCIA(ジョン・ブレナン長官)に伝え、CIAはFBI(ジェームズ・コーミー長官)に伝える。FBIはそれをきっかけに「トランプ陣営とロシアとの謀議」を疑い、トランプ陣営に対する捜査を開始する。

※2006年、オーストラリア政府はクリントン財団に対して2500万ドルを寄付。ダウナーは当時のオーストラリア外務省における立役者。クリントン夫妻とのつながりが強い。

その後の展開は以下のとおりである。


民主党及びクリントン陣営の出資により、調査会社・フュージョンGPSのクリストファー・スティール調査員がトランプのロシアにまつわる不利な内容を「ロシア調書」をまとめる。スティール調査員は元英国諜報員であり、CIAやFBIでは名が通っていた。スティールの情報ソースは自身の諜報活動ではなく人づて(主としてロシア人とシドニー・ブルーメンサルなる人物)。フュージョンGPSはそれをFBI(コーミー長官)に提供。

※シドニー・ブルーメンサルはクリントンと非常に近しい。

2016年9月、フュージョンGPSの「ロシア調書」の内容が政府からリークされ、それが「米・情報機関がトランプのアドバイザーとクレムリンとの関係を探る」の見出しでヤフー・ニュースに掲載される。

2016年10月、FBIはフュージョンGPSから提供された「ロシア調書」と上記ヤフー・ニュース記事に基づいてFISA(対外諜報監視法)法廷からトランプ陣営の活動家、カーター・ペイジに対する盗聴許可を取り付ける。それを契機にトランプ陣営に対するFBIの盗聴が始まる。

※カーター・ペイジはトランプ選挙陣営に入る以前、仕事の関係でロシアを訪問していた。FBIはそこに目をつけて盗聴許可を取り付け、ペイジを盗聴することでトランプ陣営監視への足掛かりを得た。

2016年11月、トランプが大統領選に勝利。トランプ時期大統領の側近は通常の手続きに従いロシアを含めた対外的な接触を始める。

FBIは通常の防諜活動である外国人盗聴において、通話の相手である米国人を保護するために記録上の個人名非表示(例えば盗聴対象のロシア人が通話する米国人の名前は記録に書かない)を通常行っているが、トランプ陣営に関してはこの処置を外して記録に実名を記載し始める。盗聴の対象になっていないはずの個人の実名が記載された状態で情報が政府内で回覧される。

2016年12月、トランプ次期政権の国防アドバイザーで退役軍人のマイケル・フリンが政権交代時の通常業務としてセルゲイ・キスリヤック駐米ロシア大使と通話する。FBIはロシア大使を盗聴するなかで「偶然」にマイケル・フリンとの会話を聞き取り、記録する。2017年1月24日、2名のFBI捜査官がホワイトハウスにいるフリンを訪問し聞き取りをする。

FBIによるマイケル・フリンへの取り調べがいつの間にかメディアにリークされる。メディアはマイケル・フリンがロシア大使と不正な交信をし、それに関するFBIの取り調べに対して嘘をつき、ローガン法(一般人が政府に代わって外交に影響を与えることを禁じる法)に違反したと報道。マイケル・フリンは辞任。

更にメディアは司法長官、ジェフ・セッションズがロシア大使と会った(だが「会わなかった」と嘘をついた)と報道。圧力を受けたセッションズはロシア関連の捜査から自身を忌避すると表明。

※ローガン法が制定された1799年以来、誰もこの法で裁かれたことがなかった。マイケル・フリンが第一人者である。フリンを訪問したFBI捜査官は会話の一部始終を知っており、いわば「正解」を持っていた。フリンはまさか自分が罠にはめられよとしているとは露知らず、弁護士の同伴も無しでFBIとの面談に応じる。フリンはFBIの質問に気軽に答え、FBIは後で答え合わせをする。記録との違いを見つけ、それをもって「フリンはFBIに嘘をついた」と断定。国家権力でフリンを脅し、フリンは有罪を受け入れる。

※フリンはオバマ政権のDIA(陸軍諜報部)長官として政権のイスラム・テロへの融和策を激しく批判して退任した人物であり、オバマと民主党にとっては仇敵である。真っ先に報復の対象となったわけである。

ロシア疑惑のきっかけの一つであるロシア調書について議会公聴会の場で「下品で根拠のないもの」と言及する一方でトランプ自身が捜査の対象ではないことを公に明言しないでノラリクラリとし続けるコーミーFBI長官にトランプ大統領は業を煮やし、コーミーを罷免する。その後コーミーと親しい元FBI長官のロバート・ムラーが「ロシア疑惑関連の特別検察官」としてFBI副長官のロッド・ローゼンスティーンによって任命される(セッションズ司法長官はこの件は忌避しているため介入できず)。

※ロッド・ローゼンスティーンは前政権でオバマ大統領に任命された人物。

トランプ選挙陣営の元選対本部長、ポール・マナフォートがFBIによって早朝に叩き起こされ強制家宅捜査を受ける。その後、ロシアとの謀議による国家反逆行為の証拠は何一つとして発見されなかったが、ムラー特別検察官は銀行口座の登録不備やマネーロンダリング等、「ロシア疑惑」と関係の無い罪でマナフォートを起訴。

オバマ政権、民主党、民主党支持の官僚組織幹部はまさかトランプが勝つとは思っていなかった。同時にそのようなことは決してあってはならず、トランプを破滅させるためにあらゆる手段を講じるべしと考えた。だがトランプは勝ってしまった。彼らはトランプが政権を握ればそれまでのスパイ活動がバレると考えた。そこで諜報機関を中心に官僚組織内でのトランプ包囲網を固め、政権転覆活動へと移行した。政府組織の対トランプ捜査の極秘事項が次々とメディアにリークされ、トランプとその取り巻きが何やら悪事を働いている、という意識が人々に刷り込まれた。この「ロシア疑惑」がトランプ政権を揺るがすかのような社会的気分が醸成された。

しかし、ここにきて潮目が変わりつつある。

2018年2月、デヴィン・ニューネス下院議員のメモ公開により、オバマ政権による対トランプ・スパイ網の実態が明らかになった。

2018年3月、ジェフ・セッションズ司法長官があと数日で生涯年金を保証された定年を迎えようとしていたFBI副長官、アンドリュー・マケイブを解雇。マケイブはトランプ陣営に対する盗聴許可申請書に署名した人間の一人であり、その後のロシア疑惑扇動の黒幕であった。

この「ロシア疑惑」は先の大統領選挙戦の最中において政権を握る民主党のオバマ政権が対立正当である共和党のトランプ陣営に対して仕掛けた罠であった。民主党と共和党とで逆の立場であれば「第二のウォーターゲート事件」としてメディアは共和党を大々的に糾弾していたはずである。

日々新たな情報が明るみに出ている。

議会調査により、当時のCIA長官・ブレナンが「ロシア疑惑」情報をFBIにつなぎ、民主党実力者のハリー・リード上院議員の影響力を使ってFBIのコーミー長官を動かしたことが明らかになった

※ブレナンはオバマ大統領にCIA長官に任命された人物。若き日に共産党員に投票したことがある。激しいトランプ批判で知られる。

ロバート・ムラーは今後どのようにあがくのか。氏の命運は尽きたのか。これまで沈黙を守ってきたセッションズ長官はマケイブ解雇を皮切りに反撃に出るのか。オバマ大統領自身の関与を含めて前政権中枢の仕業が芋づる式に暴かれるのか。今後の更なる展開が注目される。

トランプ就任演説 憂いと期待

  • 2017.01.21 Saturday
  • 14:31

オバマを選んだアメリカにしてトランプあり、トランプを選んだアメリカにしてトランプの就任演説あり。

多くの人々はただ目の前にある問題を誰かになりふり構わず解決してもらいたいと願っている。彼らの出した答えはトランプであった。

トランプ大統領の就任演説はこのような世相を表すものであった。溢れるスローガン、勢いある言辞、浅い内容。




これからは人々が支配する時代だ!
子供達は知識ゼロだ!
工場が国中で閉鎖されている!
我々は自分らを犠牲にして他国を富ませてきた!
保護(主義)は我々に富と力をもたらす!
我々は国中に道路を、橋を、空港を、トンネルを、鉄道をつくるのだ!
アメリカ製の製品を買おう!アメリカ人を雇おう!
イスラム原理主義をこの地球上から完全に抹殺するのだ!
アクションの時がきた!


フランス革命的な「人々が支配」ではなくて「憲法による統治」ではないのか。いくらなんでも「知識ゼロ」ということはあるまい。工場が閉鎖されているのは他国のせいではなくて自国の規制と税制によるものではないのか。保護主義が富を減少させることをまだ知らないのか。オバマの公共事業による「経済刺激策」を倍にするのか。最終製品はアメリカ製でも原料は海外産というのもあるぞ。イスラム原理主義を「地球上から完全抹殺」するために十字軍を再結成するのか?アメリカ第一主義と矛盾するぞ。「アクション!」はオバマのスローガンだぞ。

「アメリカ第一」を掲げたことについては健全化への第一歩と期待されるが、「自由」という言葉が使われたのは一度だけ。「合衆国憲法」という言葉は0(参考)。

トランプ翼賛者はトランプをレーガンと比較するが、レーガンの保守主義に裏打ちされた就任演説と比べると「月とスッポン」である。




実際の政策が実行されるのはこれからであるから今後の動きを見守るしかないが、実に「想定内」なでだしである。いずれにしても健闘を祈りたい。

ドナルド・トランプ恫喝大王の誕生か

  • 2016.12.04 Sunday
  • 18:10

 

トランプ氏、米空調大手キャリアと国内雇用維持で合意
[29日 ロイター] - ユナイテッド・テクノロジーズ (UTX.N) 傘下のエアコンメーカー、キャリアは、インディアナポリスにある工場の約1000人の雇用を維持することで、トランプ米次期大統領と同州元知事でもあるペンス次期副大統領と合意した。


ドナルド・トランプが大勢の予測を覆してクリントンに勝利したことを受け、トランプ勝利を予測していたことをさも凄いことであるかの如く自慢する人間が日本にもちらほらと見受けられる。この世には「予想屋」という稼業があり、予想屋にとっては「こうなる」と言ったことが実現するのは良いことである。故に予想屋の予想が当たったことは予想屋にとっては喜ばしいことであろう。

当ブログにとって重要なのは、そして当ブログが社会にとって重要であると考えるのは予想が当たることではない。当ブログの目指すのは予想を当てることではない。保守主義を学びながら保守主義のレンズを通して世の中で起こることを観察し、そしてそれらが持つ意味を保守主義のプリズムを通して理解し発信することである。

だが世の予想屋は予想が専門であるから予想を超えた情報を伝えることはないし、トランプという人物の非保守性が持つ意味を伝えることもない。

当ブログはトランプの大敗北を断言したが、結果として逆にクリントンが敗北した。これは喜ばしいことである。なぜならばトランプが保守主義者でないにしても極左であるクリントンよりもマシだからである。だが非保守トランプには非保守であるがゆえのリスクがある。そのリスクはトランプが就任もしていない現在既に現れてきている。そしてそのリスクこそが我々日本人が理解し、我々の社会に置き換えて考えなければならない部分である。

ドナルド・トランプは、国外に工場を移転しようとしていたエアコンメーカーのキャリア社に対してエサをぶら下げつつ圧力をかけた(デイリーワイヤー)。

エサというのは7百万ドルの税控除である。

トランプ派の報道はこれを自由経済の原則である低税率への回帰だ、と持ち上げているが、そういう話ではない。税金というものは、その社会の全員に同じ率が適用されるから公平なのである。個別の企業に対して個別に交渉して個別の税率を設定するなどというのは腐敗以外の何ものでもない。なぜならばこの会社が700万ドルの控除を受けるということは、他の税金を負担している企業(とその従業員)が間接的にこの会社のために税金を負担させられているからである。

圧力というのは政府関連の発注キャンセルである。キャリア社の親会社はユナイテッド・テクノロジー社で、この会社は合衆国政府から67億ドル相当の防衛関連業務を受注している。トランプは、ユナイテッド・テクノロジー社に対してこの業務契約の更新取りやめを示唆し、更にキャリア社が国外移転先工場から米国へ商品を逆輸入する際に懲罰的な関税を課すと脅した。

同社が米国内に工場を維持する場合のコストが6千5百万ドルであり、それに対して提示された税控除が7百万ドルであるから本来は割にあう話ではなかった。それでも同社が折れたのはこの脅しがあったからである。

トランプは記者会見を行い、ユナイテッド・テクノロジー社とキャリア社の経営陣を褒め称えた。だが最後のほうになって思わず地が出てしまった。

And in the end, what happened is — because that makes it much more difficult. I mean, it’s hard to negotiate when the plant is built. You know what Greg said? Greg said, “But, you know, the plant is almost built, right?” I said, “Greg, I don’t care; it doesn’t make any difference; don’t worry about it.” “What are we going to do with the plant?” “Rent it; sell it; knock it down. I don’t care.”

「だけど、これは簡単じゃなかった。(移転予定の国外の)工場が既に建設済みということで、交渉は難しかった。グレッグ(ユナイテッド・テクノロジー社、グレッグ・ヘイズ会長)が俺に何て言ったかというと、『もう工場建てちゃったんスよ』と。で、俺は言ったんだが『そんなモン知るか、グレッグ。何とかせいや。大丈夫だろ』と。そしたら『でも工場はどうしたらいいんスか?』と言うんで、『貸すか、売るか、ぶっ壊すかせぇや。知るかよ』と」

But we’re not going to need so much flexibility for other companies because we are going to have a situation where they’re going to know, number one, we’re going to treat them well. And number two, there will be consequences, meaning they will be taxed very heavily at the border if they want to leave, fire all their people, leave, make product in different companies — in different countries, and then think they’re going to sell that product over the border.

「(キャリア社は)柔軟性があったから結果うまくいったと言えるわけだが、今後はそういった柔軟性を求める必要は無くなるだろう。なぜならば今後国外に移転し、国内の従業員を解雇し、国外で製品を製造しようとするような企業には相応の結果が待っているからだ。そういう製品を再度国内に持ち込もうとする際には非常に高い関税がかかってくるよ、と・・・」




トランプは「どうだ、俺は米国の雇用を守ったぞ」と胸を張る。これは資本家の家を収奪して庶民に与えて「どうだ、俺は庶民に家を与えたぞ」と威張る共産主義者とさほど変わらぬ姿である。企業を政治的パフォーマンスに利用する姿はまさしくファシストである。

企業の経営者はファシストでも独裁者でもなんでも構わない。「ワシがこうやと決めたんや!その通りに実行せんかい!ついて来られん奴はクビだ!」で全く問題なしである。

大統領や政治的リーダーの仕事は企業を恫喝することではないし指導することでもない。企業が自由に活動することができる枠組みを構築することである。企業が自由に活動する中で技術革新が生まれ、勝者と敗者に分かれるとともに経営資源が勝者に集まり、集まった資源が投資されて雇用が創出され、富は人々の手にいきわたる。

ロナルド・レーガンは企業を恫喝しなかった。レーガンは政府規模を縮小して支出を削減し、税金を下げ、規制を緩和して富の爆発的増加を誘発させた。それはレーガンが真の保守主義者であったからである。

トランプは早速空前絶後の「一兆ドル規模の公共工事による景気テコ入れ」をブチ上げている。大恐慌を長引かせるだけに終わったニューディール政策の再来である。これはトランプがどこをとっても保守主義者ではないからである。

現在トランプの周辺にはマイク・ペンス次期副大統領をはじめとする保守派が何人がいる。ペンスがトランプを保守方面に誘導すると期待されており、一部の閣僚の人選では成功の形跡が見られる。だがこのキャリア社の一件でペンス自身が関わっているのを見ても、どこまで期待できるか疑問である。

日本の安倍政権はトランプの企業恫喝を見て奮い立っていることであろう。政府が企業を恫喝するのは日本では珍しいことではない。

企業の内部留保が増え続けて377兆円に達した今、政府は企業に対して金を吐き出せ、とヤクザのように迫っている。「賃上げしろ、投資を増やせ、景気回復に貢献しろ」と。なぜ企業が内部留保を積み上げるのかといえば、株主への配当と会社の従業員の雇用維持に責任を持つ経営者が将来を心配するからである。将来考えられる逆風が襲ってきても耐えられるように防御壁を築いているわけである。だが愚かな政府のやることは、彼らを余計に心配させることばかりである。

米大統領選挙において、本来の保守主義と市場経済の考え方が日本にも伝えられることを期待したが、テッド・クルーズ敗退でその希望が一旦潰えた。そしてトランプ勝利によって共和党がまとまり、トランプが保守主義者の見識を吸収した姿を見せてくれることを淡く期待しているのであるが、それは過大な期待とならざるを得ないか。

祝・クリントン敗北 - そして保守派の戦いは続く

  • 2016.11.12 Saturday
  • 13:42

苦渋に満ちた米大統領選が正式に終わった。結果として極左でありオバマの政策の継承と拡大を確約していたヒラリー・クリントンの敗北に終わったことはひとまず喜ばしいことである。

当ブログは米大統領選に関する最後の投稿でトランプの大敗北を断言したが、それが完全に外れたということである。そしてそれでよかったのである。

なぜヒラリー・クリントンが敗北し、ドナルド・トランプが勝利したのか。

トランプは今までも述べてきたとおり、不安定でおぼつかない人物である。一般的にトランプは「過激だ」と言われる。だがトランプの発言や行動に過激な部分は一つもない。

メキシコとの国境が不法移民の温床となっている現実において、物理的な壁を建設するのは当然である。イスラム教徒の移民が欧州、豪州、北米において毎日のようにテロを引き起こしている現実において、少なくとも高リスクな地域からのイスラム教徒移民を遮断するのは当然である。これらはトランプの十八番ではなく、テッド・クルーズも主張していたことである。

トランプの問題は過激なことではない。世の言い方を使えばトランプは中庸であり中道である。価値観についても経済についても外交についても一本の筋が通っているわけではなく、あっちに振れてこっちに振れ、いったいどこに軸があるのか分からない人物である。そのためか多くの愚劣な発言を繰り返しては保守派を幻滅させてきた。共和党上院で最も保守とされるユタ州選出のマイク・リー議員などは、低劣な行動や発言を暴露され続けるトランプに対して本選挙を目前にして退陣を求めたくらいである。

保守の言論界においては大きく三つのグループに分かれた。一つは絶対トランプ支持派。これはフォックスニュースやブライトバート誌である。二つ目は、ヒラリー・クリントンによるこれ以上の国家解体を阻止することを第一目的とし、”鼻をつまんで”トランプに投票しようとする一派。これはマーク・レビン等の多くの元クルーズ支持者達がこれに入る。そして三つ目は絶対トランプ不支持派(#NeverTrump)。これにもベン・シャピーロやグレン・ベック、アマンダ・カーペンターといった元クルーズ支持者達が入る。

ヒラリー・クリントンが敗北した理由。それはオバマ政権とヒラリー自身の酷さ故である。オバマ政権8年によってアメリカの軍事力は後退し、同時に外交上の威信も低下。経済は破綻した状態で超低空飛行。政権と政権の意を受けた最高裁による社会実験で伝統的価値観と自由は未だかつてない攻撃にさらされている。それに対してヒラリー・クリントンから出てくるのは使い古された左翼的な言辞。それに加えてクリントンの腐敗。情報セキュリティ問題に加えて計算外にマズかったのが最後に出てきた「アントニー・ウィーナー問題」である。これについては公衆良俗のため多言は避ける。この世から隔絶された生活を送るハリウッドのセレブと左翼思想に脳髄をやられた人間以外はこのオバマ路線を突き進まんとする極左クリントンに少なからず危機感を覚えたはずである。

トランプが勝利した理由。それはクリントンの酷さゆえの自爆と保守派の踏ん張りである。

クリントンの酷さゆえに多くの民主党支持者が熱意を喪失した。投票数がそれを物語っている。一方共和党支持者の保守はクリントンによるオバマの社会主義政策拡大に強い危機感をいだいていた。特に危ないのが高齢化が進む最高裁で、クリントンが政権を取れば左翼の判事が任命されることになる。そうなれば社会の基盤である性別や結婚の概念が変容さっせられ、銃による自衛の権利も風前の灯である。

トランプの政策は良い部分と悪い部分の寄せ集めである。選挙戦初期のころのトランプには「壁をつくる!」だけの印象であったが、指名獲得してから終盤にかけてだいぶまともな政策が出てきている。大幅減税しかり、オバマケア撤廃しかり、教育自由化しかり、エネルギー開発の解放しかり、規制緩和しかり。良い部分はこれまでの対抗者から拝借したものもあればマイク・ペンス次期副大統領の指南によるものもあろう。だが反自由貿易的な姿勢(一部のトランプ支持者は「反グローバリズム」とはしゃいでいる)、社会福祉の拡大、政府主導のインフラ事業拡大、親露的態度、陰謀論への加担など、首をかしげるようなものから唾棄すべきものまで負の部分もある。

それらを総じてクリントンよりも遥かにマシであり、クリントンを止められるのはトランプしかいない。いまトランプを選ばなければ取り返しのつかないことになる。一旦失われたものは返ってこない。一旦壊れたものはもとには戻らない。

この強い危機感が保守派を突き動かした。

マーク・レビンをはじめとする保守派は決してトランプ翼賛会には堕しなかった。彼らはオバマ民主党とクリントンに対して熾烈な批判を繰り広げながらトランプが正しい発言をすれば称揚し、愚劣な発言をすれば雷を落とした。そして同時に選挙ではトランプに投票することを公言した。

トランプとトランプ支持者からいわれなき暴言と侮辱を受けたテッド・クルーズは自ら電話を取ってトランプへの投票を訴えた。「ヒラリーを止めるために」と。

彼らの熱意と行動によってトランプは襟を正して奮闘し、そして不承不承トランプ支持者と絶対トランプ不支持派の一部の心を動かした。

投票当日、マーク・レビンのラジオ番組にマイク・ペンス副大統領候補が電話で登場、「クリントンを止めるために投票を!」と呼びかけた。マーク・レビンは投票締め切りの数十分前まで「Get out and vote! It's time to get the key and go to vote! Stop Hillary! C'mon!」と叫んだ。

トランプは彼らに感謝せねばならない。そして約束を守らなければならない。だが人間は簡単に変わるものではない。若者ならまだしも、トランプほどの高齢であれば疑問を持たざるを得ない。

保守派はクリントンを破った。だが彼らは権力を握ったトランプを制御できるか。

保守派の戦いはこれからである。

米大統領選挙 トランプ敗退の様相

  • 2016.08.06 Saturday
  • 22:55

ドナルド・トランプを担いだ共和党が苦しんでいる。トランプは自らを制御することが出来ない。

失言に次ぐ失言。刃に布着せぬ発言でもなければビジネスマンとしての型破りな発言でもない。

世界最大の国家のリーダーとしての風格など微塵も無く、日々経済や国際情勢への無知をさらけ出している。指名を受けたいまとなっては党内をひとつにまとめ、民主党の罪悪を暴き立てつつ未来への希望を語り、共和党支持者だけでなく無党派層も取り込まなければならない今この時期に、いまだに指名獲得を争ったテッド・クルーズや保守派を攻撃している。

その様子を保守派は反吐がでる思いで見ている。これは想像ではない。アメリカの保守派ラジオ局には多くの視聴者が電話をかけてくる。「いやいやながらトランプに投票する」という人もいれば「絶対にトランプには投票しない」という人もいる。

保守派に関して総じて言えるのは冷めた態度である。絶対にトランプに勝たせたい、という熱意は無い。それどころか、共和党大会までは支持を表明していた人々も、トランプの迷走ぶりに焦りを感じ始めている。

今は8月で選挙は11月。まだまだ情勢が変わる可能性はある。しかし現時点ではどの支持率をとってもクリントンが勝っている。伝統的に共和党の強い州でも民主党が盛り返している。

このままでいけばトランプは地滑り的大敗を喫することになる。

トランプは彗星のように現れた男ではない。90年代から時折大統領候補に立候補しては消え、ついこの間まで民主党の支持者として政治家を陰で動かしてきた人間である。2012年にも立候補し、妙な発言を繰り返しては鳴かず飛ばずで早々に撤退している。

大統領選を見守る人間にとっては何の新鮮味も無い人間なのであるが、なぜか今回は「俺は壁をつくる。そしてそれをメキシコに払わせる!」という一発芸が受けてしまった。今更ながらに人々の記憶力の無さにはあきれるばかりである。

だが所詮は一発芸。問題はこれからである。

主要メディアは指名候補争いの間は概ねトランプを好意的に扱った。保守派のテッド・クルーズを徹底的に無視する一方でトランプには最大限の放送時間を与えた。

その目的はトランプを勝たせるためではない。目的はヒラリー・クリントンを勝利させることである。クリントンにとっての脅威はトランプではない。それはテッド・クルーズである。13歳にして合衆国憲法を暗記し、法曹界でのし上がって政治の世界に入った隙の無いディベートの名手、テッド・クルーズは既に撤退した。

クルーズを排除してトランプという自己制御機能の無い人間をとりあえず共和党のリーダーにしておき、クリントンが指名された後でトランプを始末しようという魂胆である。

8年間に及ぶ左翼オバマ政権による国家破壊を経たアメリカは、更に教条主義的な左翼であるヒラリー・クリントンが政権を取ればもはや後戻りできないほどに変質させられることになろう。

米国民ではなく単に保守主義の勝利を願うばかりの私にしても、誠に憂鬱なる選挙である。

共和党大会 テッド・クルーズ演説

  • 2016.07.23 Saturday
  • 16:42


クリーブランドで開催された共和党大会にてドナルド・トランプが正式に共和党の大統領候補として指名された。共和党大会の目玉は当然トランプの指名受諾であるが、注目すべきは第二位に終わり途中撤退したテッド・クルーズの演説であった。

ドナルド・トランプは本大会の演説において、声が大きいだけで中身が無く、哲学的な信念が不確かさで経済や国際情勢に対して無知であることを相変わらずさらけ出した。



「オレ一人だけがこの国を偉大にすることができる!」
「オレは企業が海外に移転するのは許さない!」
「オレは不公正な貿易を許さない!」
「オレは貿易赤字を許さない!」
「オレはバーニー・サンダースの支持者を取り込む!」
「オレたちはLGBTQ達を取り込む!」

トランプは大統領は一人で政策を断行できる独裁者かなにかと勘違いしているのか。トランプは企業活動の自由が経済発展に不可欠であることを知らないのか。トランプは貿易赤字が強い通貨と高い購買力の証左であることを知らないのか。トランプは共産主義者であるサンダースの支持層を狙っているのか。トランプは性別を否定する極左か。

LGBTQのQは"Questioning" = 自分の性的志向は何なのだろうかと疑問を感じている人々のことらしい。今回この言葉をトランプの演説で初めて聞いた人間は多い。

この演説を聞いてトランプを支持した間違いに気づき、じっとりと汗ばんだ人間は多いであろう。

クルーズはトランプの前に演説をすることになった。クルーズの演説はまさしく大統領としての風格に溢れるものであった。



クルーズが打ち出したメッセージは「自由への回帰」である。

教育、医療、税制、インターネット、そして言論において自由を取り戻さなければならない。

信教の自由… あらゆる信仰を持つ人々が良心を追求する自由を守らなければならない。

自らの身と家族の安全を守る自由(銃の保持)を守らなければならない。

そのためには憲法を堅持しなければならない。

そのためには最高裁判事がその地位を濫用して法を解釈するのではなく、憲法の精神に従わなければならない。

中央集権を阻止し、州の権限を保護しなければならない(地方分権)。

大きな政府を拒否しなければならない。

国境守備を強固にしなければならない。

自由によって経済は活性化し、個人は尊厳を得る。


クルーズは呼びかける。

「来る11月の選挙では必ず投票してほしい。自分の良心に従って投票してほしい。我々の自由を守り、憲法に忠実であると信じる候補者に、投票してほしい」

トランプ陣営によるブーイングの嵐が沸き起こったのはこの瞬間であった。クルーズが「トランプこそが大統領にふさわしい!このお方に一票を!」とやらなかったからである。クルーズの演説の最後の部分はほとんどブーイングにかき消された。そしてそこにタイミングを合わせてトランプが会場に登場し、トランプ支持者は「トランプを大統領に!」を連呼。




トランプ陣営は言う。「クルーズは共和党の指名獲得者を支持する誓いを破った。当然の報いだ」と。

だが事前にクルーズの演説原稿を入手して内容を読み、そのうえでクルーズを招待したのは他ならぬ彼らであった。彼らはクルーズが演説を始める数時間前からクルーズに対してトランプ支持を明言するようプレッシャーをかけ始めた。

だがクルーズは屈しなかった。自分自身だけでなく、妻や父親に対しても聞くに堪えない雑言を浴びせたトランプへの支持表明をしないのは人として当然のことであろう。またトランプは今の今まで結局は保守主義を何も理解せずに来ている。保守主義者であるクルーズにとってトランプへの支持表明が変節であると考えられても不思議はない。

クルーズはトランプへの不支持表明をすることもできた。だが共和党の融合を求めるクルーズはそれをしなかった。代わりに「自分の良心に従った投票を」と呼びかけたのである。

指名獲得を逃しながらも共和党内融合を呼びかけるテッド・クルーズを既に指名を獲得したトランプとその支持者達が執拗に攻撃する。民主党候補者であるヒラリー・クリントン一人に照準を合わせなければならない今、この瞬間にである。

大会翌日・支援ボランティアを前に演説するトランプ
「テッドの支援表明なんていらねぇよ」
「テッドなんて誰も気にしちゃいねぇよ」 (19分)
「テッドのオヤジがオズワルド(ケネディ暗殺者)に関係してた話もあるしな」(21分)




共和党は引き裂かれている。似非保守は虚勢を張り、保守本流はがっくりと肩を落としている。

一方民主党はヒラリー・クリントン支持で一致団結している。民主党とリベラルが大勢を占めるメディアによる攻撃が始まるのはこれからである。

当たる確証は無いが、トランプが大統領になる可能性は99%無いと断言する。

左翼オバマの次は左翼クリントンとなるか。そうなれば更なる国家解体が進み、世界は益々不安定になる。

憂鬱な時代は続く。

米大統領選挙 クルーズ撤退

  • 2016.05.08 Sunday
  • 17:49

共和党の指名候補争いにおいて最後に残った中で唯一の保守主義者であったクルーズが撤退し、米大統領選挙は事実上終了した。

ディベート、インタビュー、スピーチ等において、トランプが保守主義というものを全く理解しておらず、世論や聴衆に合わせて発言内容をコロコロと変える日和見主義者であり、思想的背景はニューヨークのリベラルであることが明白となったにも関わらず、イカツイ顔で一見過激な発言を咆哮するトランプの戦闘的な姿勢が低IQな有権者にウケ、結局はクルーズの良識を凌駕することとなった。人々は眼を覚ますことはなかったということである。

本選挙は、共和党候補者としての指名を獲得することになるドナルド・トランプとヒラリー・クリントとで戦われることになるが、この二人は思想上の相違点はほとんど無い。

トランプはクルーズが撤退すると、早速左傾化を始めている。

CNBCとインタビューではオバマ政権の「低金利政策」への指示を表明。借金は素晴らしいと発言。

同じくCNBCとのインタビューで自身で公表したトランプ政権の税制プランに反して中流以上に対する増税を早くも示唆している。

CNNとのインタビューでは最低賃金を上げることへの理解を表明。「俺はフツーの共和党員じゃないからさ」と。



民主党の指名候補争いにおいて、クリントンとサンダースが「どちらが正統な社会主義者であるか」を競っているが、本選挙においては同じ戦いがクリントンとトランプとの間で戦われることになろう。

当ブログは「トランプが絶対勝つ!なぜならば・・・」あるいは「トランプが絶対負ける!なぜならば・・・」的な予測をすることには全く興味を持たない。

どうなるかを決めるのはアメリカ国民である。当ブログは日本にとって望ましいのは何かを追求するのみである。

日本にとって(当然アメリカにとっても)望ましいのはクルーズであった。なぜならば、クルーズが指名を獲得すれば民主党陣営との対比が明確になり、更にクルーズが本選挙で勝てば、日本に徹底的に欠如している保守主義が脚光を浴びることになろうからである。なぜならば、強い経済、強い国防、自由な社会を実現するのは保守主義だけであり、クルーズこそが保守主義を体現する存在だからである。しかしいまやその希望も潰えた。

これからもしかしたら米選挙に関する記事を書くことになるかもしれないが、選挙が事実上終了してしまった今となっては非常に面白味の無いものとなった。

アメリカは8年間に及ぶオバマ左翼政権の負の方向性を転換する貴重な機会を逃した。そして我々日本人は保守主義の何たるかを垣間見る機会を逸した。誠に残念なことである。


 

共和党ディベート・フロリダ  クルーズ、大統領の風格

  • 2016.03.13 Sunday
  • 01:04

今回のディベートはクルーズとトランプの二名に絞られつつある共和党指名争いにふさわしいものであった。CNNの司会者、ジェイク・タッパーの手腕によるところが大きい。前回二つのディベートのようななじりあいは影を潜め、真面目な政策論争が戦われた。



ドナルド・トランプは辣腕ビジネスマンとして「腐った政治を外から変える!」を売り文句に、密室政治クラブと化した共和党指導部に愛想をつかした怒れる人々の支持を集めてきた。

だが今回のディベートで明らかになったのは、他でもないトランプこそが密室政治クラブの長年のメンバーだということ、そして何ら斬新な考えもなければ洞察も見識も持ち合わせていない凡庸な人物だということである。

光ったのはやはりクルーズであった。強固な保守主義と確かな見識に裏付けられた弁舌は益々冴え、大統領の風格さえ漂わせはじめたと言っても過言ではない。

マーコ・ルビオは健闘した。ルビオには指名獲得の可能性はほとんどない。だが大統領の代弁者たる副大統領にふさわしい弁舌を持っている。今回はその良い面が存分に発揮された。

国際経済について・・・

トランプが十八番を披露する。

「中国や日本は通貨を操作して不当に安い商品をアメリカ市場にダンピングする!そういうのは許さん!俺はハードネゴでもっと良い、素晴らしい取引条件を勝ち取る!」

トランプはかねてから中国製品に対して45%の関税をかけることを提唱している。

クルーズが答える。

「輸入品に関税をかけて困るのはアメリカの消費者だ。かつてのスムート・ホーリー法は大不況をもたらした。関税というのは消費者への税金なのだ」



トランプが強面でやり返す。「45%というのは実際にかける、ということじゃなくて、中国への脅しだ!」

クルーズが返す。

「脅し・・・。トランプ氏は中国を脅しているのではなくて、消費者である皆さんを脅しているのです。皆さんが店で買い物をするあらゆる商品に45%の関税をかける、と皆さんを脅しているのです。大統領になろうとする者には見識が必要なのです」



社会福祉について・・・

トランプはかねてから現行の社会福祉を維持すると明言してきた。そしてそのために「俺はムダと詐欺と腐敗を一掃する!」と。だがそれ以上に具体的な政策は語られていない。今回そこを追求された。数字の辻褄が合わないが、具体的に何をするのかと。

トランプは苦し紛れに答える。

「アメリカは軍を世界中に配備しているじゃないか!日本、韓国、ドイツ、それからサウジアラビア・・・これが無駄なんだよ」

「俺はアメリカ軍を最強にする。任せろ!」と常々言っているトランプにしてはしょぼい回答である。

クルーズが切り込む。

「社会福祉の問題に対処するためには勇気がいる。老齢の人々には政府が約束した恩恵を与えなければならない。だが若い人々には市場経済に即した選択肢を与えなければならない・・・

トランプの言う『ムダと詐欺と腐敗の一掃』はリベラルの政策である。なぜならば『Government is the problem = 政府こそが問題だ』という物事の本質が分かっていないからだ。実際にトランプは長年民主党員への政治献金を行ってきた。


The less government, the more freedom! 
政府は小さければ小さいほど自由は増大する!


The fewer bureaucrats, the more prosperity!
役人が少なければ少ないほど富は膨らむ!」

大歓声



イスラムについて・・・

「俺はイスラム教徒におもねったりしない!もうPC(政治的正しさ)なんぞ必要ない!」

トランプは息巻く。この勢いの良さが大いにウケているのは事実である。

だがクルーズは爆弾を用意していた。

「トランプの言葉は威勢が良い。だが詳細を見るとどうか。トランプはイランとの核合意を維持すると言う。またイスラエルとパレスチナとは分け隔てなく接すると言う。ヒラリーやジョン・ケリーのように・・・」

「つい先日もアメリカ人がパレスチナのテロリストに殺害されたばかりだ。私は大統領として明確にイスラエル指示の立場を取る!」

大歓声



クルーズは更にたたみかける。

「イスラエルは中東で唯一我々と価値観を共有する国である。テロリストの家族に金を渡して煽るパレスチナ自治政府とイスラエルをどうして同等に扱えようか!」

大歓声



キューバについて・・・

クルーズもルビオもキューバ系である。それがゆえに尚更キューバを支配する共産主義政権に対する見方は厳しい。

オバマの対キューバ融和政策に支持を表明してきたトランプに対してルビオが迫る。

「キューバとの関係は変わるべきである。そのためにキューバの政権が変わらなければならない。だがキューバは北朝鮮を陰で支援し制裁を骨抜きにしている。

ミャンマーを見よ。かつては独裁的な軍政だったがいまや自由化が進められている。キューバへもこのような変化を要求しなければならない!」

トランプは言う。「俺に任せれば良い条件を引き出すぜ」

ルビオは返す。「私はあるべき条件が何かを知っている。それはキューバが自由選挙を実施すること。それはキューバが人々を牢獄から開放すること。それはキューバが言論の自由を保障することだ!」

大歓声



そしてクルーズがイランやキューバといった狼藉国家との融和外交を進めるオバマ政権とその主要メンバーを支援してきたのがトランプであることを再び強調し、トランプの決まり文句である「もっと良い取引条件」は民主党の政策の焼き直しに過ぎないことを印象づける。



トランプは”インサイダー”・・・

トランプは常々言う。「俺は他の誰よりも”仕組み”を熟知している。だから良い取引条件が勝ち取れるんだ。だから大統領になったら国を再び偉大にできるのだ」と。

トランプの言うことは正しい。なぜならば、トランプこそが”インサイダー”だからである。

この後ディベートは残り一回となった。

インサイダーが勝つか、保守主義者が勝つか・・・ 選挙戦は終盤へと突入する。

 

共和党ディベート・デトロイト トランプ更に崩壊

  • 2016.03.08 Tuesday
  • 09:45

今回もドナルド・トランプの崩壊劇が続いた。

マーコ・ルビオは前回同様にトランプを攻撃し、二人の間ではディベートのルールそっちのけの罵り合いが展開され、そしてしばらく傍から眺めていたクルーズが両者まとめてとどめを刺した。

「皆さん、これから始まる民主党との戦いにおいて、このようなドタバタ劇を見たいですか?」



ルビオとトランプとの間の乱闘のレベルの低さにいい加減うんざりした聴衆は大歓声。

トランプは相変わらず単純な一発台詞を繰り返す。

「俺はアメリカを再び偉大にする!俺は他の誰よりも能力がある!任せろ!」

クルーズは返す。

「一発台詞をベースボールキャップに書くだけなら誰でもできる。重要なのは、そもそもアメリカを偉大な国にしたもの、合衆国憲法と権利章典を理解することである」「合衆国憲法を守ろうと真剣に考える人間が(左翼民主党の)ハリー・リード、チャック・シューマー、そしてヒラリー・クリントンといった面々に対してトランプのように献金を続けるであろうか?」

トランプはあがく。

「俺はビジネスマンだ。ビジネスマンはいろんな人と仲良くやらなきゃいけねぇんだよ!」「俺は政治家というものを知り尽くしている!だからうまくやれるんだ。ところがこのクルーズはどうだ。誰ともうまくやれねぇじゃねぇか!そんなのに大統領が務まるかってぇの!」

クルーズは鉄槌で返す。

「ドナルド、あなたの言う通りだ。あなたは既存の政治勢力の世界にドップリと使って生きてきた。そりゃぁ政治家を知り尽くしているわけだ。」「既存の政治家達は選挙では有権者達に対して耳あたりのよいことを言い、選ばれて政界中央に行った途端に”仲良しクラブ”の一員となり、約束を反故にしてきた。人々はそんな政治家たちに愛想が尽きている。私はその代表だ!」

Go along and get along (周りに合わせて上手くやる)政治家に裏切られ続けた観衆は大歓声を上げる。

ドナルド・トランプはつい最近までクルーズのキューバ移民の子としての出自を取り上げ、「クルーズには出馬資格は無い可能性がある!民主党との戦いではそこを突っ込まれるはずだ!民主党に訴えられるぞ!危険だ!」と吹聴してきた。

だがクルーズはれっきとしたアメリカ市民であり出馬資格は問題なしである。

今回、逆に訴訟という点でトランプが窮地に立たされることになった。

前回から今回のディベートでは、トランプが主催する「トランプ大学」なるビジネスマン向けの自己啓発セミナーが実は詐欺の可能性があることが暴露された。いつなんどき法廷に呼び出されるやもしれず、もしかすると大統領選どころではなくなる可能性もあるというのである。

また、トランプ十八番の「不法移民への断固たる姿勢」が実はまやかしである可能性があることが露呈した。

トランプという人間は軟体動物のようなものでつかみどころが無い。一方であることを言い、もう一方で全くそれと矛盾することを言う。そしてそれを指摘するとクネクネと言い逃れするか「嘘つきだ!嫌な野郎だ!」と罵る。

最近ニューヨークタイムズがトランプをインタビューした際、トランプはオフレコで「俺は不法移民を本気で取り締まろうとは思っていないよ。一部の人には悪ぃけど一旦戻ってもらわにゃならんかもしれんけど、またすぐに合法的に戻ってこれるわけよ」というようなことを言ったらしい。

クルーズはトランプにつめ寄る。

「録音を公開せよ」と。



トランプはまたクネクネと始める。

「いや、あれはオフレコっちゅう話で、それを公開しちゃぁまずいっしょ」

トランプがオフレコにしろというからニューヨークタイムズはオフレコにしているのである。トランプが公開せよと言えばニューヨークタイムズはそれに従わざるを得まい。

問題はトランプがこのまま勢いを維持して指名を獲得してしまった場合である。その場合にはこんどこの録音は民主党にとってのネタとなる。しかもニューヨークタイムズという左翼リベラル新聞が民主党の意に沿って録音を扱うことは火を見るよりも明らかである。

根っからのリベラルで、根っからの縁故主義者で、保守主義のホの字も知らず、強固な信条を持たぬドナルド・トランプという人物が、威勢だけで多くの人々を虜にしてきたわけであるが、それがいつまで続くのか。

盲目的に追随してきた人々にもいい加減ボロが見え始めているのか。

コロコロと都合よく立場を変えるトランプが司会者につっこまれる


移民問題に関しても、実はリベラルであることを告白させられる


候補者が一人また一人と脱落するなか、クルーズは人々にこう呼びかける。

「一部の候補者は他の候補者を罵倒することだけに明け暮れてきた。だが我々は当初から我々の選挙活動がそのような低級な戦いに堕するのを拒否してきた。私は共和党員、保守主義者、リバタリアン、そして自由を求める全ての人々に呼びかけたい。我々はあなた方をいつでも歓迎する」

戦いは佳境に入りつつある。トランプの支持は徐々に下がり、クルーズは徐々に支持を上げている。

今後数週間が要注目である。

 

共和党ディベート・テキサス 場外乱闘&トランプ崩壊

  • 2016.02.28 Sunday
  • 01:52

今回のディベートの目玉はドナルド・トランプの崩壊である。

今回のディベートは実質的にトランプ、クルーズ、ルビオの3名によるものである。トランプはクルーズとルビオに挟まれて完膚なきまでに叩かれた。

支持率において依然首位に立つトランプを倒すためにはクルーズかルビオのいずれかが身を引かなければならない、両者が争えば争うほどにトランプの指名獲得は確実になる、という一般認識ができつつある。恐らくそれは正しいであろう。今回はその意を受けてか、両者のターゲットはとにかくトランプであった。

ルビオはもはや失うものは無いと思ったのか、それとも共和党指導部や穏健派やフォックス・ニュースの支持を受けて気が大きくなったのか、分からないが主にドナルド・トランプをターゲットに大立ち回りを演じた。

ルビオ対トランプの戦いに関しては、もはや「ディベート」などと呼べるものではなく、「場外乱闘」とでもいうべきものであった。ルビオが得意のマシンガントークでトランプの弱みをまくし立て、トランプが雄叫びをあげて応戦、ルビオにたて続けに(言葉で)顔面パンチを食らってたじろいだトランプに対してクルーズがとどめを刺すという場面が展開された。

ところで保守の空気が非常に薄い日本では、トランプがなぜ大統領にふさわしくないかの理由がズレている。やれトランプは人種差別や宗教差別を煽っているだとか、やれ極右であるとか極端な排外主義であるとか。これらはイメージであって実質ではない。

トランプは全く人種差別主義者ではない。トランプは優れたビジネスマンである(少なくともそこいらのサラリーマン経営者よりは商才があるのは間違いない)。優れたビジネスマンはあらゆる人種・民族・宗教の人々と仕事をする。

トランプが大統領に(その前に共和党候補に)ふさわしくない理由はそんなことではない。トランプの問題は、トランプが根っからのリベラルであるということに尽きる。

ディベートの間、クルーズはトピック毎にトランプの「ニューヨーク・リベラル」としての真の姿を暴き続けた。それは嘘と欺瞞と偽善と不正にまみれた姿であった。

トランプはいまや不法移民にタフな人物として売り込んでいる。そしてトランプ支持者は「この問題こそが他の全ての問題に優先する!というか、この問題だけが”問題”なのだ!だからトランプしかいないのだ!」と言って憚らない。まさに恋は盲目で困ったものである。

だが、2013年に不法移民に恩赦と市民権を与えようと画策した「8人のギャング(ルビオはその一人)」に対してせっせと献金していたのは他でもなくこのトランプであった。そしてその恩赦法案を葬ったのは他でもないクルーズであった。

そして更には「不法移民を全員強制送還する!」とぶち上げて支持者を熱狂させるトランプであるが、老獪なニューヨーク・リベラルのビジネスマンらしく、実は裏口があった。トランプの一見強面な移民政策では確かに一部の不法移民は一旦送還されるものの、すぐに合法的に再入国できる、というものである(参照)。

ルビオ攻撃でぐったりしたトランプに対し、クルーズはこの弱みをピンポイント爆撃した。

「トランプと私の際立つ違いはまさに不法移民に関する政策である」と。

クルーズの政策は明瞭である。不法移民の多くはビザ期間の超過による不法滞在である。国境警備を厳重にすると同時に現行の移民法を執行し、法にひっかかった不法移民を順次強制送還し、不法移民は再び入国することはできない、というものである。

トランプは医療問題においてもニューヨーク・リベラルの姿を晒した。

既に様々なインタビューでトランプのボロは出ていた(参照)。

「あなたはシングルペイヤー(国民皆保険制度)の支持者ですか?」と聞かれるとトランプは「いや違う」と答える。

「あなたはオバマケアをどのように考えますか?」と聞かれると「あれは酷い。めちゃくちゃだ」と答える。

「あなたは貧しくて病院に行けない人をどうしますか?」と聞かれると「私が大統領になったら誰も道端で野垂れ死にしないようにする」と答える。

「保険会社が既往症を持つ人の加入を認めるでしょうか?」と聞かれると「私は”mandate”(強制加入)の考えが好きだ」と答える。

トランプとはそういうものである。軸が無くて人の顔を見てはその人が気に入りそうなことを言う。根っからのビジネスマンと言えばそうだし、金以外には何の信念も無い人間だといえばそうであろう。

クルーズは問い詰める。

「ドナルド、あなたは国民全員の医療費を政府が負担すると言いましたか?どっちです?」

「言ってない」

本当の答えはこれである。

ドナルド・トランプ 「国民皆保険・・・国民全員を面倒みる・・・政府が払う!」


表向き強面のトランプが考えているのが実は悪名高いオバマケアと変わらないことがばれてしまった。

リベラルのトランプと保守のクルーズとの対比は鮮明である。

クルーズ 「私が大統領になったらオバマケア法案を一文字残らず撤廃させる」


そして外交。

トランプは常々いかに自分が中東情勢に関して先見の明があったかを自慢する。

「リビアを見ろ。めちゃくちゃだ。カダフィを政権から引きずり下ろすなんて馬鹿なことをするからだ。私はだから最初から反対していたのだ」

だが・・・

トランプ 2011年 「カダフィを早く倒せ(0:36〜)」


トランプは健忘症なのか、それともとぼけているのか、それとも人々が健忘症かバカだと思っているのか。

いずれにしても大統領としては非常に問題である。このような軸の無いリーダーに軍がついていけるはずがない。

クルーズはとどめを刺す。

「オバマ、ヒラリー、ケリーといった者達と外交においても同調するような人間を大統領にさせてよいのか」



ところで今回ルビオは大健闘した。だがルビオは点数をあげたのか?

ルビオはトランプを叩いた。だがディベートの目的は場外乱闘で会場を沸かせることではない。政策を戦わせることである。

ルビオには今回の選挙の主要な争点である不法移民問題でフロリダの有権者に嘘をつき、今でも(全国民に)嘘をついているという大きな問題がある。

クルーズはトランプを叩きつつも同時にこの問題ではルビオを叩いた。もはやルビオには弁解の余地はない。



トランプは崩壊し、ルビオは場外乱闘。

大統領には風格と見識と判断力と経験が求められる。トランプとルビオはこの基準では失格であり、これらを全て示したのはテッド・クルーズであった。

3月1日は指名候補争いの趨勢を決するスーパーチューズデーである。指名候補を決めるのはディベートではなく選挙である。ディベートで勝っても選挙で勝つとは限らない。

神風が吹いてクルーズが首位を奪うか、それともこのままトランプが邁進するか。

有権者の良識がデマゴーグに打ち勝つか否かにかかっている。

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