日本の生産性が最下位なのはなぜか

  • 2019.02.02 Saturday
  • 16:19

 

先週、公益財団法人・日本生産性本部が、日本の2017年の労働生産性が主要先進7ヵ国(G7)で最下位だったと発表した。このワースト記録は、なんと47年連続。東京オリンピックまでこんな調子が続けば、「50年間、生産性を上げることができなかった先進国」という、誇らしくない世界タイトルを獲得してしまうのだ。2018.12.27 Diamond Online


「生産性」というと、「作業速度」と勘違いする人が多い。

日本人は比較的手先が器用なのと頭の回転が速いのでチャキチャキ働いているイメージがある。店などでも「これはどこに置いてありますか?」と店員に聞くと「ハイッ、お客様。こちらでございますッ!」とスタスタと先導して教えてくれる。レジでも店員がセッセセッセと会計をこなす。

レジの店員が客や他の店員とタラタラお喋りをしながら手を動かす他のどこぞの国とはエライ違いである。作業速度=生産性ならば、日本人の生産性は並みいる国々をブッちぎってダントツ世界一に違いない。

だが、生産性は作業スピードではない。生産性とは、同じ時間内に労働者がどれだけの価値を創造できたか、の指標である。

お喋りや昼寝をしながらゆったり仕事しようが、血眼になって限界速度に挑戦しようが、結果が問われるのは「いくらの価値が創造できたか」である。

その指標に置いて、日本人は遅れを取っているのである。これは徒競走に負けて格好が悪いだの、後塵を拝して不名誉だのという観念的な問題を意味するのではない。我々庶民が日々の多大な努力にも関わらず低い生活水準に甘んじざるを得ないということを意味するのである。

この原因は何か、という問いに対し、上記に上げた記事では「給料が低いことだ」と答えている。そして、当然ながら解決方法は「給料を上げることだ」としている。

給料を上げれば企業運営コストが上がる。すると価格が上がる。するとモノは売れなくなる。だから企業は給料を上げることができない。そんなことは分かり切っていることである。途中から話を始めるから短絡的で杜撰な分析になるのである。

生産性=労働による成果(付加価値)/ 労働投入量 である。

多くの日本人は朝から晩まで真面目に働いている。早朝から深夜、終末まで働いている人も珍しくはない。更なる改善、更なる効率化、更なる迅速化、更なる相乗効果、更なるPDCA、とより少ない人員でより多くのアウトプットを出すことを目指して計画を立て、目標を定め、実行し、結果を査定し、評価し、反省し、対策を立て、より高次なる目標へと突き進んでいる。日本人の労働投入量は、世界的に見てかなり高いと言ってよい。

問題は労働による成果である。

これだけ頑張っているのだから成果も高いはずだ、と思うかもしれないが、そうではない。

日本では、民間企業で働いていても半分以上は何らかの形で政府関連の業務である。管理部門は特にこの傾向が顕著である。

従業員が入社すれば各種社会保険や労働保険や各種税の手続きをしなければならない。従業員が家族を持てば保険や扶養やの手続きをしなければならない。例えば大企業に対しては常時雇用する従業員の一定割合以上の障害者を雇うことが障害者雇用促進法で定められている。女性活躍推進法でも非常に多くの義務が掲げられている。内容を把握するだけでも大仕事である。だが企業としては把握しなければならないのは当然であり、それに対して、いつ、誰が、何を、どのように実施していくかを策定し、社内稟議をかけ、推進していかなければならない。ストレスチェック制度によって企業は社員の「こころの状態」にも責任をもつことが義務付けられている。人事部はアンケートや面談で社員に聞き取りをし、問題のある社員を指導医に診させなければならない。

政府関連の業務を行うのは管理部門だけではない。営業部門も同じである。管理部門が動けば営業部門も動かざるを得ない。例えば厚生労働省はハラスメント対策を企業に求めており、企業はそれに従ってLGBT教育プログラムを策定し、社員は強制的に業務時間を調整して教育研修に参加させられる。

また、今年「おそらく実行されるであろう」とされる消費税増税に向けて各社が怒涛のように動いている。増税に対して競合他社はどう動くか・・・ それに対して我が社はどう対抗するか・・・ 消費者は増税前にどのようなタイミングでどのように先買いに走るか・・・ それを競合他社はどう取りにくるか・・・ それを我が社はどう阻止し、どう先手を打つか・・・ すでに他社はこのように対策を実施しているのに対し、我が社はどう挽回し、どう奪還し、どう形成逆転させるか・・・ このような熾烈なせめぎ合いが企業間で繰り広げられている。軽減税率の導入に向けてソフト面、ハード面ともに莫大な資本が投下されている。ここは各社とも「負けられない」山場である。営業部門にはかつてないプレッシャーがかけられている。

ここで挙げた例はごく一部である。国が掲げた「二酸化炭素排出削減目標」を実現させるためにエネルギー使用量を削減したりポイント還元制度でオフセットしたりと、これら以外にも企業が政府のために労働力を捧げている例は数えきれないほどである。

日本の労働者は、これらの仕事を精力的にこなしている。昨日よりも今日、今日よりも明日、明日よりも明後日と、血のにじむ思いで頑張っている。

ところでこの働きに対し、企業は政府から報酬を得ているのかといえば、当然報酬は無しである。なぜならば、これは義務だからである。

ところでこの働きは、消費者へのサービス向上に役立っているのかといえば、当然全く役立ってはいない。なぜならば、これらは消費者からの要望ではなく、政府からの要求だからである。

企業は政府のためにタダ働きしているのと同じなのである。政府の要求は大企業ほど厳格である。よって大会社になれば営業部門よりも管理部門の方が規模が大きいくらいである。政府関連業務を専門とする部署も珍しくはない。

最近日本経済新聞に「外食各社、宅配シフト 軽減税率にらむ」という記事が出た。政府のお陰で本来は睨まなくてもよいものを睨まなければならないわけである。

日本の生産性向上を妨げている原因は何か。

答えは明らかである。労働者が大半の時間を富を生まない政府関連の仕事にかかりきりになっているからである。

それはなぜか。政府が規制と法律によって民間の領域を侵食しているからである。

それはなぜか。自由な市場経済の重要性を理解する人間が、政界、財界、学会問わず、日本全国で危機的に不足しているからである。

このような意見はメディアには一切登場しないが、考えれば当たり前のことなのである。

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