『Ameritopia』読了

  • 2012.03.06 Tuesday
  • 02:00
 

アメリカ保守言論界の重鎮マーク・レヴィンによる『Liberty and Tyranny』に続く大著『Ameritopia』を読了した。 これはアメリカ人への警告の書である。  これ以上アメリカの破壊を許してはならないという警告である。 しかしその内容は決してアメリカだけの問題を語ったものではない。 我々日本人と日本社会も共通した病理を抱えている。 ヨーロッパやアジア諸国も同様である。 これは世界の人間が読むべき重大な書である。

 

建国の理念を喪失してしまったアメリカ、憲法の精神を失ってしまったアメリカ、ユートピア的変質を遂げたアメリカ、それがアメリトピアである。 アメリカ合衆国はヨーロッパから宗教の自由を求めてやってきたキリスト教徒を中心にして、神からあたえられた個人の尊厳を守ることを目的につくられた国である。 その根幹にあるのは独立宣言であり社会を束ねてきたのが憲法である。 しかし強固な個人主義と宗教的道徳に基づく自由を基礎とした社会にも、いつの間にか全体主義の思想が忍び込み、侵食し、それが大手を振るってのし歩くようになった。 もう、アメリカはかつてのアメリカではなくなってしまった。 アメリカはユートピア思想という全体主義に汚染された「アメリトピア」になりつつある。

 

人間の歴史はその多くが圧政と暴力の連続であった。 今尚この世界はその大半が抑圧と惨めさに支配されている。 個人が尊厳を持ち、自由に発言し、行動し、富を得る社会はいまだもって少数派である。 そしてそのような社会にも全体主義の魔の手が広がりつつある。 しかし人々はその危機を認識しようとしない。 それどころか、進んで全体主義を受け入れようとさえしている。

 

なぜこのようなこのような事態が展開されているのか。 そもそも我々の社会を蝕む全体主義思想はどこからやってきたものなのか。 なぜこの恐るべき思想は、にも関わらず人々を魅了し、虜にし、麻痺させ、狂気へと駆り立てるのか。 その問いに対する答えを歴史に求めたのがこの書である。 答えを求める旅は遥か紀元前に遡る。 プラトンの『共和国』、トマス・モアの『ユートピア』、トマス・ホッブスの『リバイアサン』、そしてカール・マルクスの『共産党宣言』へと至る。 彼らの思想に共通して流れるのは「利己主義と無秩序と暴力は人間の性であり、社会の安定のためには国家による徹底した統制と管理が必要である」という考えである。

 

プラトンからマルクスに至る一連の全体主義の流れがに対するもう一方の啓蒙主義の流れがジョン・ロックから始まる。 「人間の自然状態は自由と平和と他者との共存である」とするジョン・ロックの思想はアメリカ建国の父達に受け継がれる。 すべての人間は神から侵すべからざる権利を授けられる...生命、自由、そして幸福を追求する権利 小さな政府と三権分立」の生みの親モンテスキューはジョン・ロックの思想を政治原理に高め、建国の父達に知恵を授けた。 その知恵はイギリスからの独立を経て合衆国憲法として形を得る。 独立宣言と合衆国憲法は奴隷制廃止の原動力となった。

 

ジョン・ロックの思想を原点とするアメリカも、アレクシス・ド・トクヴィルが警告した弱さがあった。 そしてその弱さを利用して全体主義、プラトンを起源とするこの思想を持ちこんだのがウッドロー・ウィルソンであり、それを引き継いだのがフランクリン・ルーズベルトであった。 ウィルソンもルーズベルトも建国の父達を過去の遺物とし、憲法を屑同然に扱った。 その間アメリカは大きく変質した。 そしてオバマ政権において、その変質が更に加速しようとしている。

 

プラトン、ホッブス、モア、マルクスの世界は暗く陰鬱である。 個人は個人でなくなり、集団の中の駒に過ぎない。 同一性が求められ、ルールに従わざる者は抹殺される。 強き者だけが生きることを許され、弱き者は自殺を求められる...社会のために、全体のために、国家のために仕事も家も家族も、全てが国家の計画によって決められる。 決めるのは「良識と善意に満ちた」指導者である。 指導者のもとで皆が平等であり、皆幸せである...

 

長大な過去の文献を掘り起し、歴史をたどり、そして現代に繋げる。 これは大変な労力を要する仕事である。 故に読み手にも忍耐と試練を要求する。 「バカでも分かる何とか本」ではない。 二読三読を要する。 既に二回読んだが、正確に全体像を把握するにはあと数回は繰り返す必要はあろう。 その価値はある。 この本は読者に挑戦する。 全体主義の起源と真の姿を直視することを、そして自由の脆さと尊さを知ることを。 この本は読者を新たなる知の道へと導く。 自由とは何か、平等とは何か、労働とは、財産とは、権利とは道は長い。

 

 

Ameritopia: The Unmaking of America

http://www.youtube.com/watch?v=vWyKyYf85_Q

 

The Left Oozes of Greed and Envy

http://www.youtube.com/watch?v=DYCatIEKAZc&feature=related

 

Levin: Egalitarianism Creates Hell on Earth

http://www.youtube.com/watch?v=17AMF-iK8iU&feature=related

 

Levin: Utopians Must Destroy the Family

http://www.youtube.com/watch?v=m_Y-Sph4S7g&feature=related

 

The Republican Party Has Ceased To be Conservative

http://www.youtube.com/watch?v=6ugPknsJVJA&feature=related

 

Mark Levin: Republican Leaders Are Feckless

http://www.youtube.com/watch?v=Y3QhAmRHdgg&feature=related

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