『Eco-Tyranny(環境圧政)』読了

  • 2012.07.14 Saturday
  • 19:53
 

気象学者でラジオのトークショーホストでもあるブライアン・サスマンは著書『Eco-Tyranny』において環境主義者の悪魔的ルーツに迫る。 

 

この本が伝えんとする主題は「環境主義者達が何を目指しているか」に他ならない。 サスマンは言う、環境主義者(= 環境社会主義者)が注意深く、執念深く、同時進行的に多方面で活動している - その目的は「環境を救うため」ではなく、「我々をコントロールするため」である、と。

 

サスマンは環境主義の起源を1849年へ、すなわちカール・マルクスとフリードリヒ・エンゲルスによる「共産党宣言」発表に遡る。 私有財産の廃止をスローガンに掲げたカール・マルクスこそがグリーン教・エコ専制・環境主義の始祖である、と。 言うまでもなく、共産主義がもたらしたのは70年以上にもわたる専制独裁の恐怖と11千万人以上ともいわれる犠牲者である。

 

本書は警告する。 我々が日常的に接する「エコ」「環境」という言葉とそれに関わる活動が、この共産主義から生まれたものであると、そしてソ連崩壊により死に絶えたかに見えた共産主義が「環境保護」の衣を羽織って我々の生活の隅々まで入り込み、今まさに我々が享受している自由を脅かしつつあると、今我々が目を覚まさなければ、いったん失われた自由はもう戻ってこないのだと

 

マルクスは社会主義思想に染まったヨーロッパの科学者達の助けを得て独特の環境観を生み出す。 『地球上の全ての生物は自己増殖する傾向があるが、同時に無軌道な爆発的増殖を防ぐ自爆装置的機能を備えている。 しかしホモサピエンス(ヒト)だけはそのような自己規制能力を持ち合わせていない』 『「持続可能性」を維持するためには政府が人間の活動を規制し、規定と罰則によって生活様式をコントロールしなければならない』『でなければ、人間どもの犠牲となって多くの種が絶滅してしまうだろう』 彼らの環境観においては、人間もバッタもゴキブリも「等価値」なのである。

 

マルクスの環境主義は、その後レーニンへと引き継がれる。 共産主義の従弟、国家社会主義を掲げるヒトラーも熱心な環境主義者であった。 第二次大戦後、環境主義は60年代のレイチェル・カールソンら多くの環境保護運動家を経てアル・ゴアへ、そしてオバマ政権へと左翼・リベラルを伝って今日へと引き継がれる。 本書は、共和党ニクソン政権が環境主義におもねり「アメリカ合衆国環境保護庁 (EPA)」を創設した不幸な歴史にも言及している。

 

様々な地下資源の活用(石油、天然ガス、石炭、化学工業等)、科学技術の活用(原子力発電)、地形の活用(水力発電)といった、人々に自由をもたらし、生活を豊かに、便利に、楽しくするものを、彼ら環境主義者は目の敵にする。 それは冒頭で述べたとおり、彼らの専制的思想と真っ向から反するからである。

 

本書はアメリカ人向けに書かれている。 だが本書が告発する環境専制主義はむしろ日本において断然顕著である。 これだけ多くの国民が「脱原発」になびき、唯々諾々と節電を受け入れている現状は危機的である。 大前研一や武田邦彦といった、原子力に関わった人間達が形勢不利と見るや旗を翻し、「脱原発論」を吹聴して偽善者ぶりを発揮している。 

 

今日、マルクス・エンゲルス・レーニンの亡霊は日本社会を縦横無尽に飛び跳ねている。 「環境を守ろうよ、きれいな空気を守ろうよ、いきものたちを守ろうよ、捨てないでリサイクルしようよ、使ったらまた使おうよ、使うのをやめようよ」と歌いながら。 我々はそれに乗って踊らされている。 そして完全な繰り人形と化そうとしているのに気が付かない。 本書は、そのような我々に向けた警告である。

 

 

 

追記1: 本書では、マルクスの友人、エンゲルスが、当時産業革命真っ盛りのイギリスにおいて、工場が排出する煤煙で日光が遮断されることで地球が「寒冷化する」と警告して資本主義者達を非難したという興味深い事実が紹介されている。 事実は、寒冷化するどころか産業の発展とともに技術が進歩したことにより、ロンドンはその後格段に空気がきれいになり住環境は改善されたのである。 寒冷化、温暖化、その後は寒冷化、そして温暖化 環境主義者がいかに昔から出鱈目を吹聴してきたかということである。

 

追記2: 

  • 相変わらず原発は危険だの、再処理は危険だの、無理だの、コスト高だの、何だのと、嘘八百が流布されている。 本書は原発についても紙面を割いている。 本書で「フクシマ」は、前代未聞の津波にも関わらず深刻な事態が避けられた核技術の勝利として描かれている。 
  • 盛んに言われる放射性廃棄物の貯蔵が無理だというのも完全に嘘である。 全米の7万以上もの原子力発電所の破棄物を全部一か所に集めたとしても、高校の体育館程度の場所があれば十分足りる。 更には再処理をすれば廃棄物はその10分の1に減るのである。
  • 再処理が危険だというのも完全に事実無根である。 日本以外でもイギリス、インド、ロシアなどで何十年間も再処理が行われてきたが、人に健康被害を与えるような事故は一回として起きたためしがない。 漏れたらどうする、だの、テロ攻撃されたどうする、だの、全て陳腐な想像の産物である。
  • 原発は最も安価で安定性があり安全性の高いエネルギー源である。

キロワット時あたりのコスト

  • 天然ガス 11セント
  • 石炭   5セント
  • 原子力  4セント
  • 水力   3セント

 

 

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