灰色の日本 規制と社会福祉

  • 2013.09.15 Sunday
  • 12:41
 

 

日本経済の行く末や企業活動のあり方を語る人々が、ほぼ例外なく前提としているのは「収縮する経済」である。 

 

『日本経済が成熟の域に達した今、これからは大幅な成長はあり得ない... 高齢化が進むために経済全体が収縮の一途を辿るのは避けることはできない 国民生活を守るためには社会福祉を維持していかなければならず、そのためには国民負担が増大するのはやむを得ないそのために増税は避けられない一方企業としてはシュリンクする市場において、いかに斬新で魅力的な商品を提供できるかが生き残りのカギである... 』

 

暗く不幸で悲観的な将来像を前提としている。 その環境下で生き残りをかけて、とにかく頑張らなければならないのだと。 悲壮観漂う灰色の人生観である。

 

灰色の日本をもたらしている元凶は規制と社会福祉である。 この二つは皮肉にも国民の多くが「必要不可欠」と信じるものである。

 

誰しも安全・安心を求める心がある。 だがその心が政府信仰、お上願望、資本主義悪玉神話と結びつくとそこに規制と社会福祉が生まれる。

 

『政府ならちゃんとやってくれるはず政府なら清廉潔白なはず政府なら信頼できるはず政府ならミスをしないはず』『利益を得ようとする民間は事業運営コストが高いはず利益を得ようとしない政府は事業運営コストが低いはず

 

問題が起こるたびに「国や行政が責任をもって何とかしろ」「国や行政は何をやっているんだ」の声があがる。 その声に応えて国や行政はせっせと規制を作る。 国民から選ばれたわけでもない省庁の役人達がせっせと規制を発布する。

 

規制が発効すれば企業や個人はそれに対応するために時間と金を使わなければならない。 操業、販売、流通、製造、商品規格、雇用... これらに関してかけられる規制をクリアするために企業は人員を配置し、商品規格を変更し、流通過程を調整し、そのために人々は残業して働く。 一つ一つの規制が有形無形のコスト上昇につながる。

 

規制が発効すればそれを省庁が監督管理する。 そこに「仕事」が生まれ、それが既得権となる。 収入源を失うまいとする人々によって規制は固定化される。 規制が増えれば増えるほどに監督官庁は人員を増加させる。 そのための人件費も運営費も、その財源は国民の税金である。

 

社会福祉制度と総称される医療保険、国民年金、介護、低所得者補助といった制度が何をもたらしてきたか。 社会福祉制度とは、医療、老後の貯え、弱者の世話、不遇な人々への援助といった、本来であれば個人、家族、地域社会に属する活動を政府が運営管理することである。 個人も家族も地域社会も、この制度によってそれらが持つ本来の自助能力を奪われてきた。 軽い怪我をしただけの創建な若者に車いすをあてがうかのごとくである。 歩くことをやめれば誰しも足腰の筋肉は削がれ、自ら立ち上がることすらできなくなる。

 

社会福祉制度の財源は国民の税金である。 益々多くの人々が車いすに依存した状態に陥りつつある一方、財源の必要性は膨らむ一方である。

 

規制と社会福祉制度は様々な形で企業活動へのコスト増大をもたらす。 国内の企業はコスト競争力が低下する中、生き残るために国内の人員を削減しつつ海外へ移転する。 国内で調達していたものを海外調達へと切り替える。 国内で運営していた活動を海外に移せば、それらに関連する雇用と共にノウハウ、技術、情報も一緒に国外に流出する。 技能は国内の次世代にではなく海外の次世代に受け継がれる。 

 

国内の次世代に残されるのは収入の頭打ち、雇用の減少、夢の喪失という冷たい現実だけである。 消費低下、モラル低下、自殺といった現象は若者が「だらしないから」、「覇気がないから」はたまた「草食系だから」発生するのではない。 規制と社会福祉にがんじがらめになった社会が必然的にもたらす現象であるに過ぎない。

 

規制というのは、例えば交通ルールで右通行か左通行かを決めるというように、それによって自由が増大する場合に限って有益である 通行する方向を決めることで混雑と事故が減り、自由が増大する。 だがそのような例は稀である。 自由増大をもたらす規制に限定しようとすれば、現在存在する規制の大方は消滅させなければならない。 そして規制を増やそうとする動きに対しては、常に猜疑心に満ちた目を向けねばならない。

 

規制緩和とは「本当は締めないといけないのだが、あえて緩めてやる」という上から目線の考え方である。 必要なのは不自由をもたらすあらゆる規制を撤廃するという考え方である。 ましてや嘘を起源とする規制などは悪の際たるものである。 例えば「地球温暖化」によってあらゆる産業が規制されているが、それら規制は真っ先に撤廃されなければならない。

 

規制を外しすぎたら混乱に陥るという説があるが、それは机上の空論である。 今の我々の社会は「規制が多すぎる」どころの状態ではない。 日々の日常生活において規制されていないものは何一つとして無い。 「使うもの」だけではなくて「使わなくなった」ゴミまでもが事細かく規制されている。 何は捨ててよい、何は捨ててはいけない、これを捨てる場合は誰がどうやっていくらで引き取らなければならない (家電リサイクル法) 

 

我々の生活は規制によって始まり、規制によって終わる(ベッドやシーツも規制されているから実際は終わらないのだが)。 いわば我々は「規制を生きている」といっても過言ではない。

 

灰色の日本をもたらしているのは日本社会の成熟でも少子高齢化でもない。 経済のグローバル化でも過当競争でもない。 日本を窒息させているのは規制と社会福祉である。 我々目の当たりにしているのは国民が後生大事にする規制と社会福祉によって日本がゆっくりと壊死する過程である

 

歴史を振り返れば、その昔台湾が日本の領土だった当時、終戦から国民党軍に接収される間の二か月無政府状態であった。 規制も社会福祉も無かった。 それでも秩序が保たれた。 皆こぞって協力し、ルールを守り、治安を維持した。 略奪も暴行虐殺発生しなかった。 徳と規律と誇りを持った人々が究極の自由を謳歌した儚い一瞬だったのである。

 

それが理想だというのではない。 そこまで規制も社会福祉も無い状況においても、自立と節制と互恵の精神を持って平和で自由に生きられるのが我々日本民族であり、その精神こそが太古の昔から我々の血に脈々と流れる日本文化なのだということである。 そしてその精神を最大化することで規制も社会福祉も不要となり、明るい未来を前提に将来への展望を描くことが出来るということである。

 

 

追記:音楽産業で有名なエイベックスの松浦勝人社長が「富裕層は日本にいなくなっても仕方ない」と発言したことに対して批判が相次いだという報道があった。 「こんな国に住んでいられるか」というのがお金持ちの正直な感情であろう。 その正直な感情を批判し、日本から追い出したとして、その後に何が残るのか。 あるいは金持ちから富を収奪したら、その後に何が残るのか。  怒りの矛先が余りにも的外れである。

コメント
初めまして。

CBJさんの記事をいくつか拝見し、本当に保守主義について勉強なさっているんだなぁと感じました。

特にイスラエルについては、何分1994年生まれでまだ法律上成年でもないことと、米国や英国の保守主義について知ったのも1、2年ばかしで、驚愕の一言に尽きます。
どちらが、武士道を重んじている(むしろ相手の行動を考えれば、やりすぎ?)かは真実を知れば、一目瞭然ですよね。

それで日本のいきすぎた社会保障ですが、今読書中の「日本の保守主義の碩学」中川八洋名誉教授の著書『国が亡びる』によると、『孫子』のある記述があります。
これを知って、危機感を抱かないのが大多数の日本人なのでしょうか。

「相手国が自らの力に謙虚であれば驕慢にさせ、豊かであれば軍事力以外に浪費させてしまい、国民全体の人心が一致しているときはそれを対立抗争させ人心をバラバラに分断し離間させよ。そして、その国防力が弱体化したとき、外国の侵略などを一切想定しなくなったとき、不意をついて侵略すべし」

現代語訳ですが、社会保障のことといい、脱原発といい、欠陥だらけで穴だらけの防衛といい、原理原則に忠実にしたがっていることが分かります・・・。

そもそも社会保障とは、自由ある独立が達成されて初めて行える贅沢なのであって、亡国してしまえば、その瞬間に社会保障など雲散霧消してしまうことは火を見るより明らかです。

また、富裕層の問題についても、残念ながら逝去された英国の偉大な自由の哲人サッチャー首相の次の一言は至言でしょう。

「(仮に富裕層から富を収奪したとして)富裕層が貧乏人になっても、貧乏人が金持ちになるわけではない」

さらにハイエクの言葉に従えば、人間は不平等だからこそ気持ちの持ちよう次第で平等に扱う(尊重できる)ことができるのであって、もし全く同じならそれこそ何かよく分からない基準で差別しなければ成立しない、まさにその通りだと思います。

三島由紀夫氏は死の数ヶ月前、新聞にて、「このまま日本がなくなってしまうのではないかという思いが日に日に強くなっている」と言ったそうですが、優れた感覚の持ち主は何十年先が見えるものなのですね。

若者だからこそ、夢とか希望とかが消えうせているような感じは嫌でも感じます。それは現世代の大人の行為が反映されているものでしょう。ですが、私は大人たちに対する恨みよりも、保守主義を知らない若者が自分達を苦しめているのは一様に祖先の仕業だと憎悪の視線を向けるようになる日が来るだろうことに恐怖します。既になっているとも言えるでしょうが、それこそ全体主義の負の連鎖を加速させ、憎しみが憎しみを呼ぶ最悪の事態です。

現世代の大人たちは、自らが亡くなって墓場から世の中を見たとき、若者達、子孫が自分達に向かって怒り狂い、暴力が巻き起こるさまを見て初めて気づくのか、そうならないことを望みますが果たして・・・。

長文失礼しました。何分思うことが多々あったので・・・。
  • ホタルビ
  • 2013/09/16 3:22 AM
日本はいまだに社会主義者が力を持っていますからね。ある有名な電器メーカーの創業者も自著で「累進課税をもっと強化すべき。頑張って豊かになりたい人はアメリカにでも行けばいい」と書いていました。

社畜以外日本にはいらない、ということでしょう。

そんな夢も希望もない国が発展するわけがありません。

そうして能力のある人、事業家が日本を出ていき、多くの雇用が失われ、国民が失業と収入低下に苦しむことになった時、あの人たちは責任をとれるのでしょうか?

累進課税強化論者こそ庶民の敵です。
  • rainbow
  • 2013/09/16 11:19 AM
ホタルビ様、コメントありがとうございます。 若い人には理不尽な世の中だと思います。 本当に若い人々には保守主義に目覚めて欲しいと思います。 今後もよろしくお願いいたします。
  • CBJ
  • 2013/09/16 6:05 PM
Rainbow様、企業経営者も結構大きな政府好きがいます。 やはり我々一人一人が真実を悟ることが重要です。
  • CBJ
  • 2013/09/16 6:34 PM
コメントする








    
この記事のトラックバックURL
トラックバック

calendar

S M T W T F S
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031   
<< October 2018 >>

time

selected entries

categories

archives

recent comment

  • Diana West "American Betrayal"読了
    村中哲男 (10/15)
  • Diana West "American Betrayal"読了
    CBJ (10/14)
  • Diana West "American Betrayal"読了
    村中哲男 (10/02)
  • 気候変動というカルト宗教、そして3年連続の記録的寒さ
    CBJ (09/30)
  • 気候変動というカルト宗教、そして3年連続の記録的寒さ
    森田研究員 (09/29)
  • パレスチナとは、イスラエルとは… 民族差別の欺瞞を正す
    CBJ (07/08)
  • 「Blacklisted by History」読了 マッカーシズムとは何だったのか
    カーター (02/12)
  • 「Blacklisted by History」読了 マッカーシズムとは何だったのか
    CBJ (02/11)
  • 「Blacklisted by History」読了 マッカーシズムとは何だったのか
    村中哲男 (02/09)
  • イスラムの侵略者が欧州を襲う
    村中哲男 (02/09)

recent trackback

links

profile

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM