テッド・クルーズ 「A Time for Truth」読了

  • 2015.09.04 Friday
  • 01:07



本書は2016年大統領選挙の共和党候補者であるテッド・クルーズの自伝であり、政策声明である。

政治の世界によく見られるのは選挙保守である。選挙のたびに保守回帰し、選挙が終わると保守を置き去りにして左派におもねる。それが政界中枢では「良識的」とされる。テッド・クルーズはその類ではない。クルーズ氏は若きながらも保守の道を歩んできた人物である。それは政界の保守度ランキングで首位を争うことからも明らかである。

クルーズ氏は高校時代からミルトン・フリードマン、フリードリヒ・ハイエク、アダム・スミス、フレデリック・バスティア、ルートヴィヒ・フォン・ミーゼスといった保守・自由主義の経済を学びつつディベートに熱中し弁論に磨きをかける。ハーバード大学を卒業後、合衆国最高裁のウィリアム・レンキスト判事のもとで事務官を務め、史上最年少でテキサス州の首席検事となり、国内最大の法律事務所の弁護士として活躍、2012年に共和党現職の合衆国上院議員、デイビッド・デューハーストに挑戦して勝利をおさめた。

父、ラファエル・クルーズはキューバに生まれ、カストロの共産革命に身を投じる。バティスタ政権から逃れてアメリカに亡命するが、共産革命後のキューバを見て過ちに気付く。カストロを支援したことを恥じ、キューバ人移民社会でそれが過ちであったことを公言、反カストロ・反共産主義を提唱する。

大統領選挙においては公私を問わず様々な「秘密」が暴かれる。あることないこと書きたてられる。父の過去、高校時代に派手にやらかした悪戯事件、身内のドラッグの問題、妻ハイディが鬱に苦しんだこと、これら本来ならば「そっとしておきたい」ことが明確に述べられている。悪意を持って歪曲されそうなことをあえて事前に出してしまおうという戦法であろう。

クルーズ氏は長年の共和党の悪癖である中道主義を糾弾する。

保守に「かたより過ぎる」と大多数を取り込むことができず、選挙で勝つことは出来ない。故に共和党は左翼にも共感してもらえるように中道を目指すべきである。

これが共和党指導部の長年の考え方であった。

だが実際は共和党が大きな勝利をおさめたのは「中道」を訴えたときではなく、保守が立ち上がったときであった。レーガンしかり、ティーパーティーしかりである。逆に大きく敗北したのは「中道」が全面に出たときであった。ブッシュ二期目しかり、2012年大統領選しかりである。

一般的には巨大派閥に属していることや豊富な資金源を持っていることは強みであるとされている。だがクルーズ氏は自身の強みはそのような派閥や資金源を持たないことであると言う。クルーズ氏に資金を提供しているのは大部分が個人であり、その多くが一人当たり数十ドルからの献金額である。

なぜ人々はクルーズ氏の選挙運動に寄付するのか。それはクルーズ氏の保守主義に共感し、迷いとブレのない姿勢に希望を見出すからに他ならない。

なぜ巨額の献金ができない一般庶民の支持が強みなのか。

それはクルーズ氏に対する一人ひとりの支援がクルーズ氏に力を与えるからである。その力とは、クローニズムに走ることを禁じる力である。クルーズ氏の力の源泉はボス政治家でも大企業でもなく、人々にある。支持母体が一般の人々であるということは、彼らを落胆させれば終わりである。だからこそ人々の声に耳を傾けることを怠れない。ボス政治家(ジョン・ベイナーやミッチ・マッコーネルら共和党指導部)に楯突くことを厭わない。メディアにバッシングされることを恐れない。これがクルーズ氏の「ぶれない保守」たる強みである。

奇しくもこの「強さ」は大統領の座を狙っていた時期のバラク・オバマと共通するものである。オバマの戦法から学ぶべき点は多い、とさえクルーズ氏は言う。だが違いはオバマのメッセージが偽りの”Hope & Change”だったことであると。

クルーズ氏は「選挙と金」の問題をわかりやすく説明する。選挙にかける金や政治献金の額について法律で上限を設けるべき、と考える人は多いであろう。金権政治はダメだと。献金額に限度を設けて政治をクリーンにしようと。往々にして「良き意図」は裏目に出る。政府の力が行使される場合はその影響は広範囲にわたる。

金額に上限を設ければどうなるか。「見える金」は制限される一方、「見えない金」は使いたい放題のまま放置される。例えば、献金が「見える金」ならば有名人による影響は「見えない金」である。人気芸能人がある左翼候補を「無料で」持ち上げれば有権者への影響は大きい。それに対抗するためには保守の候補は多額の金でコマーシャルの枠を買わなければならない。だがその「見える金」は法律で制限されている。結果はどうなるか、言うまでもなかろう。

世界の最先端を牽引してきたアメリカの医療を「世界標準」に引き摺り下ろす政策である医療保険制度改革法(通称オバマケア)に対してもクルーズ氏は揺るがぬ姿勢で対抗してきた。上院にてオバマケアへの資金供給を遮断せんと、21時間にもわたって議事妨害の演説を行った(これはフィリバスターといい、憲法で認められた手法である)。だが保身に汲々とする他でもない共和党指導部がクルーズ氏を悪者に仕立ててオバマケアを守ったことは記憶に新しい。

ここでリバタリアンに人気で今回の大統領選挙にも出馬しているランド・ポール上院議員が共和党指導部側に回ってクルーズ氏に対して非協力的な態度をとり、普段は物腰柔らかい盟友のマイク・リー上院議員(ユタ州選出)がそのポール氏に対して激昂したことが本書に記されている。今後の選挙戦において、クルーズ氏とポール氏が勝ち残れば、このような過去の出来事も争点になるはずである。

クルーズ氏は、新たに大統領となる者が実行すべきことが3つであると説く。それは以下である。
1) 雇用と経済成長の再興
2) 憲法で謳われた権利の擁護
3) 世界におけるアメリカのリーダーシップの再確立

経済活動を低迷下させる規制を撤廃し、税率を下げ、巨大組合を抑止し、教育を自由化し、社会福祉を改革し、オバマケアを撤廃して医療の衰退を阻止し、医療保険の全国的競争を可能としなければならない。現在、保険は州内でのみ購入することが法律で許されており、それが競争による価格低下を阻害している。

オバマケアは50人以上の企業に対し、従業員全員を保険加入させることを義務化している。多くの企業が生き残るために事業拡大を見合わせ、あるいは事業を縮小している。割を食うのは長年働いてきた人々、そして働く機会を得られない人々である。クルーズ氏はオバマケアを”Job Killer”であると切り捨てる。必ず撤廃しなければならない。

建国以来200年もの間人々の自由を守ってきた合衆国憲法がオバマ政権によって引き裂かれている。憲法で規定された言論の自由、信教の自由、そして自身と家族を守るために人々が銃を持つ権利を守らなければならない。三権を分立させ、連邦政府の権力を制限しなければならない。政府が個人の領域を侵犯することを防ぐための第4、第5改正条項を堅持しなければならない。

ロナルド・レーガン大統領の「強さによる平和 (Peace through strength)」を思い出し、アメリカは再び世界においてリーダーシップを発揮しなければならない。国益の保護と明確な目的を軍事力行使の根拠としなければならない。そして圧倒的な力で勝利し、目的が達成された後に素早く手を引かなければならない(大勝利したイラク・アフガニスタンが今や泥沼であることを考えるとこれは重要な教訓である)。弱さを晒して敵を増長させるオバマ・クリントン・ケリーの外交を転換しなければならない。

クルーズ氏は核開発に邁進しつつアメリカとイスラエルに死をもたらすことを繰り返し公言するイランを最大の脅威として位置づけ、対イラン強硬法案を提出した。直ちにイランに対する制裁を再開し、1)19,000台の遠心分離機を破壊し、2)全ての濃縮ウランを明け渡し、3)大陸間弾道ミサイルの開発計画を破棄し(アメリカ攻撃が唯一にして最大の目的である)、4)国際テロの支援を中止することを求めるべしとする。そして制裁解除はこれらの要求を満足し、更にイランに捕らわれになっているアメリカ人の釈放がなされてからであると主張する。

現在17名もの候補者が出馬している。不動産会社のオヤジさん、ドナルド・トランプがダントツ首位を走っている。だが戦いはまだまだ序盤である。大統領選挙は長丁場である。これからどう潮目が変わるか誰も分からない。だから現時点で誰が首位にいるかで結末を予想するのは意味がない。重要なのは現在誰に人気があるかではない。重要なのは誰が大統領にふさわしいかである。

ブレない保守、テッド・クルーズの本領が発揮されるのはこれからである。


参考:

Senator Ted Cruz at RedState Gathering 2015



Constitutionalists Ted Cruz Squares off With Katie Couric Powerful Truth 


Ted Cruz Takes Down Code Pink Hecklers on Iran


Sen. Ted Cruz Destroys Mitch McConnell- July 24, 2015

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