電波法 - 撤廃すべき昭和の遺物

  • 2016.02.20 Saturday
  • 21:46

高市総務相「放送法違反続けば電波停止の可能性も」 2016.2.9 産経
高市早苗総務相は8日の衆院予算委員会で、放送局が「政治的に公平であること」と定めた放送法の違反を繰り返した場合、電波法に基づき電波停止を命じる可能性に言及した。電波停止に関し「行政が何度要請しても、全く改善しない放送局に何の対応もしないとは約束できない。将来にわたり可能性が全くないとは言えない」と述べた。


自民党と民主党が低レベルな論争に明け暮れている。

まことに、社会主義者どうしの論争ほど不毛なものはない。

民主党が言論の自由と国民の知る権利を盾に「報道を委縮させる」などと自民党を非難するのは笑止千万。一方自民党は言い訳じみた答弁に終始。自民党支持者は「民主党が政権を握っていたときには今の自民党と同じ答弁をしていた」などとこれまた愚にもつかない攻撃。国会では両者が細かい話をクドクドとしているが、彼らは同じ穴のムジナである。

なぜ同じ穴のムジナなのか?

それは両者とも「放送法の維持」という見地から一歩も出ていないからである。

放送法とはどのようなものか。

 

放送法
第4条 放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。
一 公安及び善良な風俗を害しないこと。
二 政治的に公平であること。
三 報道は事実をまげないですること。
四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。


「政治的に公平」とはどういう意味か?「多くの角度からの論点」とはどういう意味か?

雰囲気ではなく、フィーリングではなく、感覚ではなく、この意味を論理的に考えたことがあるだろうか。

例えば竹島の問題を考えれば、片方で「竹島は日本のものだ」と主張があるならば、もう一方で「いや、竹島は韓国のものだ」や「そんなのどうでもよい」という主張がある。

例えば北方領土でいえば、片方で「北方領土は日本固有の領土だ」という主張があれば、もう一方で「北方領土なんてもう日本のものじゃない」や「今更無駄だから諦めろ」という主張がある。

例えば「従軍慰安婦強制連行問題」でいえば、片方で「日本軍による強制連行などなかった」という主張があれば、一方で「日本軍による強制連行はあった」や「とにかく日本は悪かったのだから今更言い訳するな」という主張がある。

例えば国防に関しては、片方で「日本を周囲の脅威から守るために憲法を改正して自衛隊を国防軍にすべし」という主張があれば、一方では「過去の歴史から学び、日本は一切の自衛権を放棄すべし」という主張がある。

例えばバター不足問題でいえば、片方で「政府は輸入規制をするな」という主張があれば、一方では「バターなんぞで大騒ぎするな。国の産業を守るほうが大事だ」という主張がある。

例えば国民皆保険制度でいえば、片方で「この制度によって我が国の財政は破綻し、子孫にも莫大な借金を押し付けている。徐々にでも民間保険に切り替えるべきだ」という主張があれば、一方では「これは我が国が世界に誇る偉大な制度だ。何が何でも保持すべし」という主張がある。

政治的に公平で、多くの角度からの論点を、ということであれば、ひとつの放送者はこれらを全部を同等に開陳しなければならない。

これほどバカげたことはない。

放送者は個人の集団である。ある一定の哲学的・思考的・思想的方向性を持つ人間が世に対して言論を展開するために集まり、放送者となる。

 
  • マルクス・レーニン主義に共鳴する人々
  • 社会主義に共鳴する人々
  • 中国や朝鮮を愛する人々
  • ファシズム、国家社会主義に共感する人々
  • LGBTの主張を掲げる人々
  • 唯物・無神論者達
  • 嫌韓・嫌北・嫌中・嫌露な人々
  • 反共な人々
  • リバタリアンな人々
  • 自由主義を奉ずる人々
  • 統制経済を嫌う人々
  • 保守主義を奉ずる人々
  • 伝統を重視する人々
  • 信仰を重視する人々

これら様々な方向性を持つ人間達がそれぞれ信ずるところを発信するために放送者となる。

政治的に公平で、多くの角度からの論点を明らかにせよというのであれば、ひとつの放送者がこれらを信じる全ての人々を登場させなければならない。

これを実行したら単なる錯乱状態である。視聴者にとっては「一体何が言いたいのか分からない」状態である。

「政治的な公平性」と「多様性」を重視する放送法・・・

アメリカにも昔似たような法律があった。それは「Fairness Doctrine()」である。これは左翼の統制主義者であり、民主党のフランクリン・ルーズベルトが社会主義政策であるニューディールを推進するために法制化したものである。それによって特に保守派によるニューディールへの反対意見をメディアから抹殺することに成功した。

戦後も長らくこのFairness Doctrineは続くが、それに終止符を打った偉大な人物がいる。




アメリカ史上最も優れた大統領のひとりであるロナルド・レーガンである。

それまでのメディアは完全にリベラル・左翼に牛耳られていた。NBC、ABC、CBSといった3大ネットワークがその代表である。彼らはこの法律を盾に保守の言論を抑え込んだ。

レーガンは大統領に就任すると、それまで経済を疲弊させてきた様々な規制を次々と破壊し始める。レーガンは悪しき規制であるFairness Doctrineを撤廃させ、メディアの世界は更地となった。そこに登場したのが保守のトーク・ラジオであり、その代表格が伝説の人物、ラッシュ・リンボーである。

フェアネス・ドクトリンの歴史


いまやトーク・ラジオは保守・リバタリアンの独壇場である。

なぜか。

保守がリベラル・左翼の言論を規制したからではない。

保守の言説は深く、真実であり、面白いからであり、一方でリベラル・左翼の言説は浅く、嘘にまみれ、つまらないからである。

市場経済の原理が働き、リベラル・左翼のラジオ番組にはスポンサーがつかずに自然に淘汰されたのである。

トークラジオは読んで字のごとく「トーク番組」である。視覚で訴えるのではなく、話の中身が勝負である。保守主義が人々の長年の経験に基づいた知恵であり、リバタリアニズムが経済の真理に光を当てるものであるとすれば、リベラリズムは欺瞞と不道徳と専制のイデオロギーである。話の中身で負けるのは当然であろう。

ラッシュ・リンボーなくして今日のAMラジオは無く、Fairness Doctrine撤廃無くしてラッシュ・リンボーは無いと言われている。

ラッシュ・リンボーがトーク・ラジオの先鞭をつけ、その後に多くの保守コメンテーターが続いた。マーク・レビン、ショーン・ハニティ、グレン・ベック、その他多数・・・

放送の自由化の波はラジオから始まり、テレビやその他のメディアにも波及した。そして今日、IT技術の進歩により、ラジオ、新聞、雑誌、テレビ、ウェブサイトの垣根は完全に取り払われようとしている。

ラッシュ・リンボー
リベラルのリスナーとのバトル 「私は他人の失敗を見て自分の成功を恥じようとは思わない!」


マーク・レビン
アメリカとイスラエル、イスラエルとパレスチナ、そしてアラブ諸国、オバマを支持するユダヤ系アメリカ人について熱く語る。


マーク・レビン
保守主義とは何かをジョン・ロック、モンテスキュー、トクヴィル、権利章典、合衆国憲法を絡めて説明する。


ジョン・ストッセル
リバタリアンの視点から政府の規制がいかに有害であるかを語る(概ね同意だが保守主義者としては一部異論あり)。「子供が庭先でレモネードをつくって売るのはいまや犯罪なんだぜ!」


グレン・ベック
イスラム教の脅威を語る。


彼ら放送者が重視するのは「政治的な公平性」ではない。自らの信じるところに従って真実を伝えることである。

重要なのは、個人あるいは個人の集団である放送者の言論の自由である。彼らの言論の自由を侵害しないことこそが本当の意味での公平性である。

誰が真実を伝えているのかを判断するのは視聴者である。そして視聴者とシェアを巡る競争によって他人の話を受け売りするだけの人間や話の中身の薄い人間や嘘をつく人間は暴かれて廃れる。

自由主義や保守主義を来る日も来る日も2時間でも3時間でもかけて語り尽くすこれらの放送者に耳を傾ける。彼らは単なる「喋り屋」ではない。成功したコメンテーターは読書家でもある。彼らは経済学者や著述家や歴史家を呼んでインタビューする。そして彼らの本を紹介する。彼らの話を聞き、本を読み、それによって得られる知識は大学教育を軽く凌駕する。そして費用はタダである。

今回の大統領選挙に見るような保守勢力の立ち上がり(結果どうなるかは不明だが)は日本では見られない。政治の世界を見ても報道の世界を見ても教育の世界を見ても、ほぼ左翼・リベラルないしは統制一色である。

将来の暗さにはため息がでるほどであるが、それは日本の報道界がいまだに放送法(日本のFairness Doctrine)に統制されているからである。

旧態依然とした日本の放送法は埃をかぶったカビだらけの昭和の遺物である。

撤廃すべき悪しき統制である。

だがこの統制をいかに保持するかについて、今日も国会における不毛な論戦が続く。


 
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