共和党ディベート・テキサス 場外乱闘&トランプ崩壊

  • 2016.02.28 Sunday
  • 01:52

今回のディベートの目玉はドナルド・トランプの崩壊である。

今回のディベートは実質的にトランプ、クルーズ、ルビオの3名によるものである。トランプはクルーズとルビオに挟まれて完膚なきまでに叩かれた。

支持率において依然首位に立つトランプを倒すためにはクルーズかルビオのいずれかが身を引かなければならない、両者が争えば争うほどにトランプの指名獲得は確実になる、という一般認識ができつつある。恐らくそれは正しいであろう。今回はその意を受けてか、両者のターゲットはとにかくトランプであった。

ルビオはもはや失うものは無いと思ったのか、それとも共和党指導部や穏健派やフォックス・ニュースの支持を受けて気が大きくなったのか、分からないが主にドナルド・トランプをターゲットに大立ち回りを演じた。

ルビオ対トランプの戦いに関しては、もはや「ディベート」などと呼べるものではなく、「場外乱闘」とでもいうべきものであった。ルビオが得意のマシンガントークでトランプの弱みをまくし立て、トランプが雄叫びをあげて応戦、ルビオにたて続けに(言葉で)顔面パンチを食らってたじろいだトランプに対してクルーズがとどめを刺すという場面が展開された。

ところで保守の空気が非常に薄い日本では、トランプがなぜ大統領にふさわしくないかの理由がズレている。やれトランプは人種差別や宗教差別を煽っているだとか、やれ極右であるとか極端な排外主義であるとか。これらはイメージであって実質ではない。

トランプは全く人種差別主義者ではない。トランプは優れたビジネスマンである(少なくともそこいらのサラリーマン経営者よりは商才があるのは間違いない)。優れたビジネスマンはあらゆる人種・民族・宗教の人々と仕事をする。

トランプが大統領に(その前に共和党候補に)ふさわしくない理由はそんなことではない。トランプの問題は、トランプが根っからのリベラルであるということに尽きる。

ディベートの間、クルーズはトピック毎にトランプの「ニューヨーク・リベラル」としての真の姿を暴き続けた。それは嘘と欺瞞と偽善と不正にまみれた姿であった。

トランプはいまや不法移民にタフな人物として売り込んでいる。そしてトランプ支持者は「この問題こそが他の全ての問題に優先する!というか、この問題だけが”問題”なのだ!だからトランプしかいないのだ!」と言って憚らない。まさに恋は盲目で困ったものである。

だが、2013年に不法移民に恩赦と市民権を与えようと画策した「8人のギャング(ルビオはその一人)」に対してせっせと献金していたのは他でもなくこのトランプであった。そしてその恩赦法案を葬ったのは他でもないクルーズであった。

そして更には「不法移民を全員強制送還する!」とぶち上げて支持者を熱狂させるトランプであるが、老獪なニューヨーク・リベラルのビジネスマンらしく、実は裏口があった。トランプの一見強面な移民政策では確かに一部の不法移民は一旦送還されるものの、すぐに合法的に再入国できる、というものである(参照)。

ルビオ攻撃でぐったりしたトランプに対し、クルーズはこの弱みをピンポイント爆撃した。

「トランプと私の際立つ違いはまさに不法移民に関する政策である」と。

クルーズの政策は明瞭である。不法移民の多くはビザ期間の超過による不法滞在である。国境警備を厳重にすると同時に現行の移民法を執行し、法にひっかかった不法移民を順次強制送還し、不法移民は再び入国することはできない、というものである。

トランプは医療問題においてもニューヨーク・リベラルの姿を晒した。

既に様々なインタビューでトランプのボロは出ていた(参照)。

「あなたはシングルペイヤー(国民皆保険制度)の支持者ですか?」と聞かれるとトランプは「いや違う」と答える。

「あなたはオバマケアをどのように考えますか?」と聞かれると「あれは酷い。めちゃくちゃだ」と答える。

「あなたは貧しくて病院に行けない人をどうしますか?」と聞かれると「私が大統領になったら誰も道端で野垂れ死にしないようにする」と答える。

「保険会社が既往症を持つ人の加入を認めるでしょうか?」と聞かれると「私は”mandate”(強制加入)の考えが好きだ」と答える。

トランプとはそういうものである。軸が無くて人の顔を見てはその人が気に入りそうなことを言う。根っからのビジネスマンと言えばそうだし、金以外には何の信念も無い人間だといえばそうであろう。

クルーズは問い詰める。

「ドナルド、あなたは国民全員の医療費を政府が負担すると言いましたか?どっちです?」

「言ってない」

本当の答えはこれである。

ドナルド・トランプ 「国民皆保険・・・国民全員を面倒みる・・・政府が払う!」


表向き強面のトランプが考えているのが実は悪名高いオバマケアと変わらないことがばれてしまった。

リベラルのトランプと保守のクルーズとの対比は鮮明である。

クルーズ 「私が大統領になったらオバマケア法案を一文字残らず撤廃させる」


そして外交。

トランプは常々いかに自分が中東情勢に関して先見の明があったかを自慢する。

「リビアを見ろ。めちゃくちゃだ。カダフィを政権から引きずり下ろすなんて馬鹿なことをするからだ。私はだから最初から反対していたのだ」

だが・・・

トランプ 2011年 「カダフィを早く倒せ(0:36〜)」


トランプは健忘症なのか、それともとぼけているのか、それとも人々が健忘症かバカだと思っているのか。

いずれにしても大統領としては非常に問題である。このような軸の無いリーダーに軍がついていけるはずがない。

クルーズはとどめを刺す。

「オバマ、ヒラリー、ケリーといった者達と外交においても同調するような人間を大統領にさせてよいのか」



ところで今回ルビオは大健闘した。だがルビオは点数をあげたのか?

ルビオはトランプを叩いた。だがディベートの目的は場外乱闘で会場を沸かせることではない。政策を戦わせることである。

ルビオには今回の選挙の主要な争点である不法移民問題でフロリダの有権者に嘘をつき、今でも(全国民に)嘘をついているという大きな問題がある。

クルーズはトランプを叩きつつも同時にこの問題ではルビオを叩いた。もはやルビオには弁解の余地はない。



トランプは崩壊し、ルビオは場外乱闘。

大統領には風格と見識と判断力と経験が求められる。トランプとルビオはこの基準では失格であり、これらを全て示したのはテッド・クルーズであった。

3月1日は指名候補争いの趨勢を決するスーパーチューズデーである。指名候補を決めるのはディベートではなく選挙である。ディベートで勝っても選挙で勝つとは限らない。

神風が吹いてクルーズが首位を奪うか、それともこのままトランプが邁進するか。

有権者の良識がデマゴーグに打ち勝つか否かにかかっている。
コメント
RubioのTrump攻撃後、米メディアのRubio押しは見苦しい!
どうしても「あつかいやすい」彼を候補にしたいようで。

しかし、ChristieのTrump氏の支持表明(彼は魂を売り渡したようです)、ClintonのSC大勝利の後、若造のRubioに流れを変えるだけの力量はない気がします。
establishmentへの反感を武器にTrump氏が勝ち逃げする気しますね。(なにせ彼は自分に不利な事実は「establishement側の攻撃」と流してしまえば良いのですから)。

Ted Cruzがもっと爽やかフェイスであれば、流れは変わっていたでしょうね。
彼の顔を"candle-melting face"と表現されていて、不覚にも笑ってしまいました。
  • K
  • 2016/02/28 12:32 PM
Kさん、トランプのような、ビジネスマンとしては間違いなく有能だが国家の指導者としては冗談としか思えないような人間に騙される軸のふらついた自称保守がアメリカにも多いです。保守主義のフィルターががっちり入っていればクルーズしかいないことが分かりそうなものですが。
  • CBJ
  • 2016/02/29 11:51 PM
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