「氷河期世代を正社員化で助成」 新たな収奪

  • 2016.11.06 Sunday
  • 17:17
 

氷河期世代を正社員化、採用の企業に助成へ
政府は来年度、バブル崩壊後の就職氷河期(1990年代後半〜2000年代前半)に高校・大学などを卒業し、現在は無職や非正規社員の人を正社員として採用した企業に対し、助成金を支給する制度を創設する。少子高齢化に伴って生産年齢人口(15〜64歳)が減少する中、働き盛りの世代を活用する狙いがある。 読売新聞 10/31(月) 6:11配信 


ここまで不道徳かつ愚鈍なことを考えつき、思いつくだけにとどめず政策として推進してしまう安倍政権はある意味で見事である。

政府はこの日本に生きる全ての人々の代表である。男も女も老いも若きも持てるも持たざるも関係無く、全ての人々の共通の利益を守るために存在する。

そのように意図したところで実際には多かれ少なかれ恩恵を享受する程度には差が生じる。だが少なくとも公平性という前提があるからこそ国民は税金を納めるわけである。

もしもある人間が別の人間から財産を奪い、それをまた別の人間に渡せばそれは窃盗である。いかなる道義的理由を並べようが、それは犯罪である。そこには公平性の片りんも無い。

その犯罪的行為を政府が真顔で実施すると「政策」となる。

この世で働いているのはいわゆる「就職氷河期」に卒業した人々ばかりではない。また家計や収入面で困難を抱えているのは「就職氷河期」の人々ばかりではない。また「就職氷河期」を経験した、あるいは現在経験しているのは「就職氷河期」の人々ばかりではない。

いかなる年齢層にあろうとも、人は様々な困難に直面しながら人生を生きている。困難は金銭面だけではない。性格や人間関係もあれば家族関係や健康面等、我々が人生において直面する困難は多様である。

自分よりも良い、あるいは一見良いと思われる境遇の人々を眺めつつ、それでも多くの人々はひたむきに文句を言わず、あるいは多少は愚痴りながらも実直に一日一日を生きている。「俺は搾取されている。俺よりも収入の多い奴は俺の収入との差額を補てんする義務がある。俺はその補てんを受ける権利がある」などとゴネる人間は少数である。

だが政府がやろうとしているのはこれである。

政府は企業に対し、「ある特定の人々(1990年代後半〜2000年代前半に労働市場に出た人々)を雇用したら、政府がそれ以外の人々の金で彼らの給料を一部負担しますよ」と言っているのである。「その金は税金として既に政府の手中にあります。国民は税金だからしょうがない、と諦めているので、わざわざその使い道について了解を得る必要などないのです」と。

この道徳的な問題もさることながら経済的にも愚かである。

政府は「生産年齢人口が減少する中、働き盛りの世代を活用する狙いがある」としている。

「働きざかり世代」はそれまでに積み重ねた経験によって「働きざかり」となったのであって、35歳あるいは40歳の誕生日を境にいきなり「働きざかり」になったわけではない。働くに必要な業務経験の蓄積と、気力と体力が充実しているからこその「働きざかり」なわけである。年齢は40歳以上でもそれまでの業務経験が無ければ「働きざかり」ではないわけである。

「働きざかり世代」は雇用コストと人件費が一番高い。給料の安い若者を雇ってじっくりと育てるのとはわけが違う。企業は即戦力を求める。「働きざかり世代」の人が途中入社で入ってくれば、上司も同僚も「この人は何ができるのか」に注目する。「何も分かりませんので、一からいろいろと勉強します」では通用しない。

企業は人を採用する際にそこを見極めなければならないから試験や面接をやるのである。

政府が税金で給料を補てんしなければ雇用されない「現在働いていない働き盛り世代」の雇用コストは一般以上に高い。

企業はそのような高コストな労働者は雇わないであろうし、企業に雇わせるためにはそのコスト以上の補てん額を積まなければならない。すなわち、彼ら以外の人々が税金を通じて彼らの給料及び雇用する企業がメリットを感じる額を肩代わりすることを強いられるということである。

愚かな政策は愚かな前提から始まる。

「現在働いていない”働き盛り世代”」はなぜ働いていないのか。政府が考える原因はこれである。

「企業が雇用しないから」

「航空機が墜落した原因は飛行機がうまく飛べなかったから」と言っているようなもので、思考が途中で止まっているのである。

「企業が雇用しない」が原因ならば、「企業が雇用するようにさせればよい」となり、そのために「雇用した企業に助成金を出せばよい(給料補てん額プラスα)」が結論となる。

彼らが働いていないのは企業が雇用しないからであるが、その理由は雇用コストが高いからであり、雇用コストが高いのは雇用規制があるからである。長年にわたり雇用規制を築いてきたのは政府であり、現在の状況は長年の過ちの積み重ねである。現在40代の人々に関して言えば、20年前の1990年代の労働市場に影響を与えた規制の犠牲者である。真の原因を追究するためには時代を遡らなければならないのである。

政府の政策で「現在働いていない”働き盛り世代”」が雇用されるためにはそのコストを補てんする額がそれ以外の人々から収奪されなければならない。企業は助成金を目当てに本来ならば採用しないであろう人々を採用し、その結果業績は悪化し、悪化した業績を埋め合わせるために政府は更に助成金をつぎ込まなければならず、そのためにそれ以外の人々が更に収奪されなければならない、という不条理なサイクルへと突き進む。

政府は愚かな政策を小賢しく理論立てする。メディアは仰々しい言葉で報じ、国民は甘んじて受け入れる。

「政府は失業者を全員正式雇用する!仕事場は浜辺!二手に分かれ、一方は穴を掘る!一方は穴を埋める!財源は税金!」とでもやったほうが潔いくらいである。

そこまでやれば、メディアも国民も、その愚かさに気づかされる可能性は無きにしもあらずである。

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