ドナルド・トランプ恫喝大王の誕生か

  • 2016.12.04 Sunday
  • 18:10

 

トランプ氏、米空調大手キャリアと国内雇用維持で合意
[29日 ロイター] - ユナイテッド・テクノロジーズ (UTX.N) 傘下のエアコンメーカー、キャリアは、インディアナポリスにある工場の約1000人の雇用を維持することで、トランプ米次期大統領と同州元知事でもあるペンス次期副大統領と合意した。


ドナルド・トランプが大勢の予測を覆してクリントンに勝利したことを受け、トランプ勝利を予測していたことをさも凄いことであるかの如く自慢する人間が日本にもちらほらと見受けられる。この世には「予想屋」という稼業があり、予想屋にとっては「こうなる」と言ったことが実現するのは良いことである。故に予想屋の予想が当たったことは予想屋にとっては喜ばしいことであろう。

当ブログにとって重要なのは、そして当ブログが社会にとって重要であると考えるのは予想が当たることではない。当ブログの目指すのは予想を当てることではない。保守主義を学びながら保守主義のレンズを通して世の中で起こることを観察し、そしてそれらが持つ意味を保守主義のプリズムを通して理解し発信することである。

だが世の予想屋は予想が専門であるから予想を超えた情報を伝えることはないし、トランプという人物の非保守性が持つ意味を伝えることもない。

当ブログはトランプの大敗北を断言したが、結果として逆にクリントンが敗北した。これは喜ばしいことである。なぜならばトランプが保守主義者でないにしても極左であるクリントンよりもマシだからである。だが非保守トランプには非保守であるがゆえのリスクがある。そのリスクはトランプが就任もしていない現在既に現れてきている。そしてそのリスクこそが我々日本人が理解し、我々の社会に置き換えて考えなければならない部分である。

ドナルド・トランプは、国外に工場を移転しようとしていたエアコンメーカーのキャリア社に対してエサをぶら下げつつ圧力をかけた(デイリーワイヤー)。

エサというのは7百万ドルの税控除である。

トランプ派の報道はこれを自由経済の原則である低税率への回帰だ、と持ち上げているが、そういう話ではない。税金というものは、その社会の全員に同じ率が適用されるから公平なのである。個別の企業に対して個別に交渉して個別の税率を設定するなどというのは腐敗以外の何ものでもない。なぜならばこの会社が700万ドルの控除を受けるということは、他の税金を負担している企業(とその従業員)が間接的にこの会社のために税金を負担させられているからである。

圧力というのは政府関連の発注キャンセルである。キャリア社の親会社はユナイテッド・テクノロジー社で、この会社は合衆国政府から67億ドル相当の防衛関連業務を受注している。トランプは、ユナイテッド・テクノロジー社に対してこの業務契約の更新取りやめを示唆し、更にキャリア社が国外移転先工場から米国へ商品を逆輸入する際に懲罰的な関税を課すと脅した。

同社が米国内に工場を維持する場合のコストが6千5百万ドルであり、それに対して提示された税控除が7百万ドルであるから本来は割にあう話ではなかった。それでも同社が折れたのはこの脅しがあったからである。

トランプは記者会見を行い、ユナイテッド・テクノロジー社とキャリア社の経営陣を褒め称えた。だが最後のほうになって思わず地が出てしまった。

And in the end, what happened is — because that makes it much more difficult. I mean, it’s hard to negotiate when the plant is built. You know what Greg said? Greg said, “But, you know, the plant is almost built, right?” I said, “Greg, I don’t care; it doesn’t make any difference; don’t worry about it.” “What are we going to do with the plant?” “Rent it; sell it; knock it down. I don’t care.”

「だけど、これは簡単じゃなかった。(移転予定の国外の)工場が既に建設済みということで、交渉は難しかった。グレッグ(ユナイテッド・テクノロジー社、グレッグ・ヘイズ会長)が俺に何て言ったかというと、『もう工場建てちゃったんスよ』と。で、俺は言ったんだが『そんなモン知るか、グレッグ。何とかせいや。大丈夫だろ』と。そしたら『でも工場はどうしたらいいんスか?』と言うんで、『貸すか、売るか、ぶっ壊すかせぇや。知るかよ』と」

But we’re not going to need so much flexibility for other companies because we are going to have a situation where they’re going to know, number one, we’re going to treat them well. And number two, there will be consequences, meaning they will be taxed very heavily at the border if they want to leave, fire all their people, leave, make product in different companies — in different countries, and then think they’re going to sell that product over the border.

「(キャリア社は)柔軟性があったから結果うまくいったと言えるわけだが、今後はそういった柔軟性を求める必要は無くなるだろう。なぜならば今後国外に移転し、国内の従業員を解雇し、国外で製品を製造しようとするような企業には相応の結果が待っているからだ。そういう製品を再度国内に持ち込もうとする際には非常に高い関税がかかってくるよ、と・・・」




トランプは「どうだ、俺は米国の雇用を守ったぞ」と胸を張る。これは資本家の家を収奪して庶民に与えて「どうだ、俺は庶民に家を与えたぞ」と威張る共産主義者とさほど変わらぬ姿である。企業を政治的パフォーマンスに利用する姿はまさしくファシストである。

企業の経営者はファシストでも独裁者でもなんでも構わない。「ワシがこうやと決めたんや!その通りに実行せんかい!ついて来られん奴はクビだ!」で全く問題なしである。

大統領や政治的リーダーの仕事は企業を恫喝することではないし指導することでもない。企業が自由に活動することができる枠組みを構築することである。企業が自由に活動する中で技術革新が生まれ、勝者と敗者に分かれるとともに経営資源が勝者に集まり、集まった資源が投資されて雇用が創出され、富は人々の手にいきわたる。

ロナルド・レーガンは企業を恫喝しなかった。レーガンは政府規模を縮小して支出を削減し、税金を下げ、規制を緩和して富の爆発的増加を誘発させた。それはレーガンが真の保守主義者であったからである。

トランプは早速空前絶後の「一兆ドル規模の公共工事による景気テコ入れ」をブチ上げている。大恐慌を長引かせるだけに終わったニューディール政策の再来である。これはトランプがどこをとっても保守主義者ではないからである。

現在トランプの周辺にはマイク・ペンス次期副大統領をはじめとする保守派が何人がいる。ペンスがトランプを保守方面に誘導すると期待されており、一部の閣僚の人選では成功の形跡が見られる。だがこのキャリア社の一件でペンス自身が関わっているのを見ても、どこまで期待できるか疑問である。

日本の安倍政権はトランプの企業恫喝を見て奮い立っていることであろう。政府が企業を恫喝するのは日本では珍しいことではない。

企業の内部留保が増え続けて377兆円に達した今、政府は企業に対して金を吐き出せ、とヤクザのように迫っている。「賃上げしろ、投資を増やせ、景気回復に貢献しろ」と。なぜ企業が内部留保を積み上げるのかといえば、株主への配当と会社の従業員の雇用維持に責任を持つ経営者が将来を心配するからである。将来考えられる逆風が襲ってきても耐えられるように防御壁を築いているわけである。だが愚かな政府のやることは、彼らを余計に心配させることばかりである。

米大統領選挙において、本来の保守主義と市場経済の考え方が日本にも伝えられることを期待したが、テッド・クルーズ敗退でその希望が一旦潰えた。そしてトランプ勝利によって共和党がまとまり、トランプが保守主義者の見識を吸収した姿を見せてくれることを淡く期待しているのであるが、それは過大な期待とならざるを得ないか。

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