「同一労働・同一賃金」空想に基づく愚策

  • 2016.12.25 Sunday
  • 11:58
 

大半の企業、人件費の拡大懸念 同一労働同一賃金の導入に警戒感
政府は20日、非正規労働者の待遇を改善する「同一労働同一賃金」の実現に向け指針案を示して取り組みを強化する方針を表明したが、産業界では導入への警戒感を強めている。「制度が決まれば対応しなくてはならないが、コスト的には厳しい」(大手スーパー)と、人件費の拡大を懸念する声が圧倒的に多い状況だ。人手不足のなか人材流出の懸念もあり、産業界は対応に苦慮している。 SankeiBiz 12/21(水) 


「同一労働ならば同一の賃金を払うべし」という考え方は、この世に「同一労働」というものが存在する、という幻想に基づいている。

限りなく「同一」に近い、例えば工場の組み立てライン作業を考えてみる。部品Aと部品Bが流れてきて、作業員はAとBを組み合わせて部品Cにするプロセスである。そこでは作業員が指示に従って単純な作業さえすれば同じ仕上がりになるような仕組みになっている。ではここで働く10名の作業員は「同一労働」をしているのか、といえばそうではない。その工程の後では部品Cが仕様通りに組み立てられているかを機械で自動判定する検査工程がある。そこではズレや不完全な組立てが検知されて自動で良品と不良品に仕分けられ、同時に作業員毎の良品率が計測される。

この例において、一定時間内における10名の良品率が100%から60%にわたる場合、ある作業員は100%の仕事をし、ある作業員は80%の仕事をし、ある作業員は60%の仕事をしたことになる。もしもすべての作業員の良品率が100%であったとしても、それはたまたまその検査に違いを判定するだけの精度が無い、もしくはそこまでの精度が求められていないというだけのことで、「違いが存在しない」ということを意味するわけではない。

複数の人間による作業には必ず違いが存在する。違いが存在しないのは、同一規格でつくられた機械による作業だけである。人間は同一規格でつくられているわけではない。人間は性格も能力も指向も多様である。同じ人間でも気分の良い日もあれば悪い日もある。気力が充実していれば集中力が増す。気になることがあれば注意力は減じる。

単純労働ですら人により違いが生じ、同一人物であっても時と場合によって違いが生じる。何らからの付加価値を求められる仕事において、その差は指数関数的に増大する。

また同程度の仕事を同程度に仕上げる複数の人間に関しても、与えられた仕事に素直に取り組むか、早く仕上げるか、体裁よくきれいに仕上げるか、工夫して改善につなげるか、仕事内容の文字ヅラに表れない違いは山ほどある。また、長く仕事を続ける可能性が高いか、もしくは結婚や妊娠等で途中で仕事を辞める可能性が高いか、といった当人の資質以外の要素によっても雇用者にとっての被雇用者としての価値は違ったものとなる。

賃金というものは労働の価値に対する対価である。

これら多様な人間による労働において、「同一労働」と「同一賃金」を語るというのは完全なる空想の世界である。

空想にふけるのは時として楽しいものである。個人が空想にふけるのは自由である。だが政府が空想に基づく政策を施行するとき、結果は空想の範囲を超えて現実のものとなる。

「同一労働・同一賃金」を導入するとき、賃金をパフォーマンスの高い側に合わせてはパフォーマンスの低い人間の慢心を呼び、逆にパフォーマンスの低い側に合わせてはパフォーマンスの高い人間のモチベーションを下げる。妥協策として企業はパフォーマンスの平均値に賃金を合わせる。

結果として企業内にはある程度の慢心とある程度のモチベーション低下がもたらされる。パフォーマンスに基づいた最適賃金の設定は妨げられ、全体的にコスト高となる。高パフォーマンスの人材の不満と低パフォーマンスの人材の慢心が同時に発生するのであるから当然である。

それがために産業界では人件費の拡大が懸念されているわけである。

あらゆる企業が安心して金儲けに邁進することこそが景気回復への道である。そのための枠組みを整備するのが政府の役割である。その枠組み整備とは規制の排除に他ならない。道路の信号のように最低限全ての人が守らなければならない決まりに従う以外はいつ、誰が、どこへ、どのような道筋で行こうが自由である、というようにしなければならない。

政府がやっているのはその逆である。故に景気の悪化は必然である。
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