"Rediscovering Americanism"読了

  • 2017.09.17 Sunday
  • 12:15


Rediscovering Americanism and the Tyranny of Progressivism

アメリカ主義と進歩主義による専制の再発見、と題される本書は、たゆまぬ信念で全米に保守主義を啓蒙する言論人、マーク・レビンの最新の著書である。

生命、自由、そして幸福の追求を人々の神から与えられた権利であるとし、その権利を守るために英国から独立して政府を樹立すると謳った独立宣言、そしてその政府を樹立するための法的枠組みを記した合衆国憲法、これらに凝縮された精神をレビン氏は「アメリカ主義」と呼んでいる。

アメリカ主義とは米国においては伝統的な保守主義のことである。しかしトランプ政権の誕生に代表される国家主義やポピュリズムといった「何か違うもの」によって人々は米国の保守主義とその本質を見失いかけている。それに警鐘を鳴らし、保守主義とは米国建国のルーツそのもの(アメリカ主義)なのだということを示し、一方で保守主義・アメリカ主義に対する多方面からの攻撃が歴史的にどこからやってきたのかを解き明かすのが本書の目的である。

著者のレビン氏はアメリカ主義の根本は西洋文明の起源に遡るとしている。アリストテレス、キケロ、ジョン・ロック、シドニー、エドマンド・バーク、モンテスキュー、アダム・スミスといった人々の語った言葉を引用し、個人の自由と道徳は神が人間に与えた至高のものであるとする自然法こそがアメリカ主義の理念の源流であるとしている。これらの人物はそれぞれ生きた時代も宗派も考え方も異なっていたが、共通しているのは神あるいは創造主という存在に対する畏敬の念である。

そのアメリカ主義と対立する進歩主義はヨーロッパで育まれた。ルソー、ヘーゲル、ロベスピエール、カール・マルクスといった人物が進歩主義の哲学的基盤を作った。そしてそれは19世紀にアメリカに輸入され、ハーバート・クローリー、セオドア・ルーズベルト、ジョン・デュウィー、ウッドロー・ウィルソンといった言論人、哲学者、政治家によって徐々にアメリカにも浸透していった。進歩主義が敵視したのはまさにアメリカ主義とその源流である自然法であった。

アメリカ主義が消極法(negative law)を重視する一方で進歩主義は積極法(positive law)を推進する。本書は積極と消極という言葉に惑わされて間違いやすいこれらの概念を説明する。消極法とは「政府はこれこれをしてはならない」と政府の領域を限定し、同時に個人の領域を守るものである。積極法は「政府はこれこれをするべきである」と政府の領域を限定せず拡大を促進し、ひいては政府・官僚機構の肥大化、自由喪失、専制へとつながるものである。

人間の自由と生命は神が与えたものであり、神聖にして侵害してはならないという概念を普遍的な真理であるとする自然法、そしてその自然法を国家として成就させたアメリカ主義。一方普遍的な真理の存在を否定し、集団主義と中央集権によって人間社会は常に上昇していき、最終的には平等な理想社会が実現するとする進歩主義。

19世紀から20世紀はアメリカ主義が開花した時代であった。人類の歴史上類の無い規模で富が創出され、技術の進歩により人々は貧困を克服し、寿命を延ばし、生活を豊かにした。富創出の原動力は個人の自由と財産の保護による産業の勃興であった。

一方の進歩主義は社会主義、ナチズム、ファシズム、共産主義へと発展し、未曽有の殺戮をもたらした。ソ連崩壊後もその哲学は官僚組織として米国社会に深く根を下ろして生き長らえることになった。そして今、米国社会の持続と繁栄をもたらしてきたアメリカ主義は進歩主義の攻勢によって危機に直面している。

本書はアメリカ主義と進歩主義を歴史的なルーツから掘り起こして明確に対比させ、極左の民主党と非保守のトランプが争いと迎合を繰り返し、それを左右両側がスポーツ対決の感覚で囃し立てるばかりの現在の米国社会に「真面目になれ!」の鉄槌を下す。そして低劣で皮相な泥仕合に没頭するのか、無関心に逃げるのか、建国の理念に立ち返るのかの決断を迫る。

著者は米国のために本書を著した。だが日本人が読んでも読みごたえのある一冊である。絶え間ない政府領域の増大も真理・哲学・価値観の喪失も自由と繁栄の喪失もまさにわが日本の問題でもある。このような著者が存在しない我が国は更に危機的であると言わざるを得ない。



参照:ジム・デミント元上院議員のマーク・レビンへのインタビュー
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