「日銀破綻」読了

  • 2019.01.13 Sunday
  • 16:22



辣腕金融トレーダーとしての経歴を持つ維新の会議員・藤巻健史氏は日銀の破綻とそれに伴うハイパーインフレの現実化が近いと警告する。

政府は足りない資金を日銀に新しい紙幣を刷らせて賄ってきた。その結果、日銀は経済規模に対して大量にお金をばら撒くに至った(対GDP比で世界最大規模)。

藤巻氏はこの行為を過去のハイパーインフレの経験から各国で禁じられている財政ファイナンスであり、飛ばし行為(危機を先延ばしする)であると断じ、以下のような経緯をたどるであろうと予測する。

 

日銀の財務諸表は極めて脆弱であり、インフレ加速に対して引き締めを行えば、金利が上昇して債務超過に陥り、信頼の失墜、円の暴落を経てハイパーインフレに突入する。

日銀が大量に保有する国債の利回りは僅か0.279%で経常収支(大部分が保有債券からの利子収入)は1兆3000億円。日銀当座預金残高384兆円。1%金利を上げたようとする場合、民間銀行に3.8兆円の金利支払いが必要となり、収入が1.3兆円の現在、2.5兆円の損失となる。CPI(消費者物価指数)が2%になれば、金利を2%以上に上げなければインフレが加速してしまう。384兆円の2%で7.6兆円。6.3兆円の損失となる。

日銀の準備金は僅か8.2兆円。金利が2%になれば1年ほどでこの準備金を使い果たし、債務超過になってしまう。債務超過になることが明らかになった時点で円売りが始まり円の価値は暴落する。

2%でインフレが止まる保証はない。更に上振れする可能性が高い。異次元緩和を止めれば政府が資金繰り倒産。金融引き締めを行えば日銀の倒産。インフレが進む中、異次元緩和を継続するしかない。インフレが10%、20%と上がる中で異次元緩和は継続される。ハイパーインフレへまっしぐら。

国が資本投下して支えればよいという声があるが、赤字財政で資金捻出する術がない。

毎年、新たな国債が30兆円以上発行される。現在は日銀が(紙幣を刷って)これを買い支えている。日銀が買うのを止めたとたん長期金利が跳ね上がる。国債価格が下がり、投げ売りが始まる。

一方、赤字予算の政府は金利が上昇すれば支払い金利が急増して大赤字になる。日銀による国債爆買いに支えられてき政府の資金繰りはたちまち行き詰る。政府が資金繰り倒産の危機に直面する。

ハイパーインフレはある日突然やってくる。20%〜30%程度は1980年の米国の例でも十分にあり得る。

日銀倒産、新中央銀行設立。政府は財政破綻を免れる。1088兆円の巨額債務もタクシー初乗りが1億円〜1兆円なら実質ないも同然。1億円の財産があっても吹き飛んでしまう。実質的な借金棒引き。払うのはハイパーインフレで地獄を見ることによって国民が払う。


極めて暗い将来であるが、氏はそれに対する防衛策を示す。

氏が提唱する防衛手段とはドル資産と仮想通貨の購入である。様々な通貨があるが、やはり避難通貨は米ドルであるという。また預金封鎖の際にはスマートフォンひとつで口座開設も送金もできる仮想通貨が避難通貨になるという。従来通りの円貨の銀行定期預金が最もリスクに晒されることは間違いない。時代は変化し続けている。お金も変化し続けている。我々は適応しなければならない。さもなければ財産を失うリスクを受け入れるのみである。

さて、重要な示唆を与えてくれる本書であるが、意見を異にする部分もある。

氏は、「デフレ脱却するには異次元緩和する必要はなく、円安とマイナス金利を導入すればよかった。円安もマイナス金利も伝統的金融政策によって実現可能。円安になれば日本の競争力が高まり、マイナス金利によって投資と消費が盛んになり景気が回復する」と説く。

氏は常々日本の問題は大きな政府による社会主義的、計画主義的政策が原因であると説いている。疑問に思った私は氏に疑問をぶつけてみた。



氏は通貨価値の上げ下げや金利の上げ下げは資本主義に反せず、別に計画経済ではないと思っているようである。

古くは産業革命時代の英国、自動車革命時代の米国から現代のスイスまで、経済発展しているのは通貨価値を下げた国ではなく通貨価値を安定化させた国である。通貨安が発展につながるならば、通貨価値が暴落したジンバブエは今頃先進国である。

また、政府が景気を良くしようと金利を下げると、本来なら事業者が二の足を踏むような不確かな投資に対する抑制が効かなくなり、結果として浪費の増加と貯蓄(投資資金)の減少をもたらす。まさに計画主義の弊害である。

計画主義者にとって金利を上げ下げする力以上に計画主義を実行する手段として強力なものは無いのである。

これらの部分は意見を異にするが、現在の日本が置かれた状況に対して真摯に向き合っている人物が、少なくとも政界には氏以外には見当たらないのである。

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