トランプ大統領・一般教書演説

  • 2019.02.11 Monday
  • 10:31

トランプ米大統領の一般教書演説は力強く自信に満ち溢れるものであった。オバマから政権を引き継いで2年になるが、政治哲学の違いがこれほどまでに世の空気を変えるものかと改めて感慨に浸る。

減税と規制緩和による経済の活性化。地下資源エネルギー産業の復興とエネルギー輸出国としての地位確立。雇用の増加と上昇する所得、特に黒人やマイノリティーにおいて低下する失業率。米国第一を掲げる外交政策。

トランプは不法移民によって引き起こされた悲劇とその悲劇の犠牲者の家族を紹介し、国民の安全を守るためにメキシコとの国境に壁を建設しなければならないと改めて強調する。体を張って不法移民と日々対峙する英雄的な入国税関捜査官(南米からの合法的な移民)を紹介し、議会は大喝采をもって迎える。

民主党議員は沈黙。

トランプは成功事例を次々と挙げながら政治の壁を越えて米国人として一つにまとまろうと呼びかける。それを妨げるものは党派主義であるとし、その代表を政権発足以来続けられていながら何の証拠も示すことが出来ない「ロシア疑惑捜査」であると断じる。

議会は大喝采をもって応え、民主党議員は沈黙。

トランプはロシアの重大な違反によって意味をなさなくなった中距離核戦力(INF)廃棄条約を破棄することを言明し、ロシアを敵として明確に位置付けた。ロシアに対して融和外交に終始した民主党がこのトランプに対して「ロシアと共謀してクリントンを追い落とした」というのであるから滑稽である。

トランプは生命の尊さに触れ、中絶に失敗して生まれてしまった赤子を医師が殺すのを許すべしと述べたバージニア州知事を糾弾する。居心地悪そうにチャック・シューマーがモゾモゾし、大統領の真後ろに座るナンシー・ペロシが目をぱちくりさせる。トランプが後期中絶の禁止を訴えると議会は喝采し、白装束の民主党議員の席は静まり返る。

ベネズエラの新政権への支持を明言する一方、国民への弾圧を強めるマドゥロ政権に言及し、米国は絶対に社会主義への道を歩まないことを明言する。バーニー・サンダースは手を顔に当てた姿勢を硬直させて座ったまま。

イスラエルの米国大使館をエルサレムに移転したことに触れ、イスラエルへの強い支持を改めて明確にする一方、イランとの核合意から離脱したことの正しさとイランへの締め付けを強めていく意思を強調した。

全体を通して高揚感のある演説であった。トランプらしい気さくさを感じさせる場面の多く、高所から見下ろすような政治家目線でない言葉遣いにも好感を覚える。ただし、聞いていて疑問に感じる部分があったのも確かである。

女性の権利拡大を後押しする発言や有休家族休暇の立法化を支援する発言があったが、これは民主党のリベラル思想である。全ての人を平等に尊重するはずの米国の理念に反するのではないか。

中国に触れる場面があったが、言及されていたのは「中国との貿易赤字」であった。貿易赤字は問題の根本ではないし問題ですらない。問題は中国政府による中国企業を使った高度技術の窃盗行為である。中国政府はその技術を軍事利用し、それが米国とその同盟国を脅かしてる。そのことをなぜ強調しなかったのか。

各国の貿易障壁について触れ、今後米国製品に対して貿易障壁を設けた国に対し、その国の産品への同レベルの障壁をもって対抗するという発言があった。これは自国民の利益を考えたときに最も避けなければならない感情的な落とし穴であり、残念なことである。

国内の「老朽化するインフラ」を整備するために資金を投じるという意味の発言があったが、資源の無駄に終わったニューディールの二の舞となることが危惧される。一方で危機的に増え続ける政府支出の削減を求める発言は無かった(日本よりは遥かにマシなのだが)。これも心配要素である。

トランプは社会主義を排することを明確にしたが、一方で製薬会社に対して薬の価格を下げることを求めた。資本主義が機能するためには政府があの手この手を使って市場経済に介入しようとするのを防がなければならない。このような発言を聞くたびに一抹の不安を覚える。

トランプの演説は保守派からは絶賛あるいは好意をもって迎えられている。これら懸念事項がどうでるか。それが折り返し地点となる2020年に向けての課題であろう。

Trump's 2019 State of the Union address | Full Speech





追記:
トランプの中国との貿易戦争の問題点は、「中国政府による技術窃盗」に焦点が絞られていないことである。鉄やアルミに対する輸入関税の悪影響は様々な分野に表れてきている。懸念すべき事項のひとつである。

Nail manufacturer: Trump's steel tariffs put us on the brink of extinction

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