Diana West "American Betrayal"読了
- 2014.10.31 Friday
- 00:02
Diana West著作、「American Betrayal」を読了した。 本書は、現在アメリカ社会に脅威を与えているイスラムという敵を敵として認識することすらできないアメリカ社会への警告である。 現在イスラムはアメリカ社会に浸透している。 低層部だけでなく中層部、政権内部にまで浸透している。 なぜアメリカはこうも無防備なのか。 アメリカ社会をこれほどまでに敵による浸透に対して脆弱にしているのはどのような精神構造なのか。
著者、ダイアナ・ウェストはその答えを第二次世界大戦に求める。 敵による社会奥深くまでの浸透は前例があったのだと。 その前例とは共産主義の浸透であったと。
本書はいままで語られてきた第二次世界大戦の歴史観をひっくり返す問題作である。 著者はアメリカ人であり、アメリカの立場から歴史を語っている。 だが著者は、いわゆる勝者史観ともいうべき「第二次世界大戦は良い戦いであった」とする従来の史観に異議をつきつける。
アメリカ人は騙されてきた。 「アメリカは第二次世界大戦にて巨悪を滅ぼした - 欧州にて(ナチス)、そしてアジアにて(日本) - ソビエト連邦という”そこまで悪くない”国と同盟して…」 アメリカ人はそう信じてきた。
ナチスよりも遥かに多くの人々を殺したソ連はナチスを凌ぐ悪であった。 1930年代からロナルド・レーガン大統領が登場するまでの間、歴代のアメリカ政権はその事実を無視し、ソ連の存在を許容し、ソ連との共存を選択し、ソ連という悪の帝国が命を長らえるよう取り計らった。
アメリカがソ連の影響下になかったならば、第二次世界大戦ははるかに短い期間で終わっていたはずであった。 はるかに少ない犠牲者ですんでいたはずであった。 はるかに少ない破壊ですんでいたはずであった。 それは連合国側にとっても、枢軸側にとってもである。
アメリカが自国や連合国の軍隊への補給を差し置いてでもソ連の軍隊を助けたLend & Leaseのような政策(1941年からアメリカからソ連に対してありとあらゆる物資、食糧、はたまた後に核兵器となるウランまでが大統領直轄で最優先で届けられた)がなければ、欧州戦線において欧州の端っこ(フランス・ノルマンディー)からでなくて中欧から攻め上がっておれば(反共チャーチルはこの案を推していた)、ドイツを含む欧州の反共・反ナチスの勢力を支援していたならば、ドイツの反共・反ナチスの勢力と共闘してソ連の影響を欧州から排除していたならば(アメリカ、ルーズベルト政権は、スターリンの強烈な要請を受けてこれら反共勢力に対してプロパガンダ攻勢をかけると同時に彼らに対抗するソ連寄り勢力を積極的に支援した)… ナチスとの戦争ははるかに短い期間で終了していたはずであり、同時にヨーロッパからソ連の影響を排除することができていたはずであった。 そうであれば、ソ連が超大国として戦後の世界に君臨することはなかったはずであった。 うまくすれば、ソ連は自壊し、ロシアの旧勢力が盛り返して共産主義はその時点で終焉していたかもしれなかった。
大国ソ連がなければ、欧州、アジアにおける共産化によるお夥しい犠牲者は発生しなかったはずであった。
何十年にもわたる欺瞞の後、たぐいまれなる指導者、ロナルド・レーガンによってソビエト連邦はついに潰えた。 しかしイスラムという新たなる脅威が頭をもたげている。 そして「見覚えのある」欺瞞がまたしても政界を、メディアを、学会を、そして社会を、支配している。 このままでは、「もと来た道」を歩むことになる…
本書はアメリカ人のために書かれたものであるが、日本人である我々の歴史観にも大いなる意味を持つ。
正しい記憶を持つ日本人であれば、1940年代初頭、日本がいかにアメリカとの開戦を回避すべく努力に努力を重ねたかを覚えている。 日本側だけでなく、アメリカ側にも同様に日本との戦争回避を求める声があった。 しかしこれら双方の働きかけはことごとく邪魔にあった。 邪魔立てをしたのはソ連(ドイツと日本との挟み撃ち状態に陥ることを恐れていたスターリンは何とかして日本とアメリカを衝突させたがっていた)の意を受けたハリー・デクスター・ホワイトをはじめとする共産主義者たちであった。
アメリカのルーズベルト政権がソ連の影響下になかったならば、少なくとも開戦に至るほどまでには両国間の緊張は高まることはなく、真珠湾攻撃に端を発する両国における夥しい死傷者の発生もなかったはずであった。 日本はアメリカではなくソ連と戦っていたはずであり、ドイツと日本から挟み撃ちされたソ連は弱体化し、欧州、アジアは戦後の共産化を免れていたはずであった。 欧州、アジアは共産化によってもたらされた大量殺戮も免れていたはずであった。 日本は樺太や千島列島をソ連に奪われることもなかったはずであり、満州はそのまま独立国として繁栄を続けたはずであり、朝鮮の分断もなかったであろう。
著者、ダイアナ・ウェストは左翼からのみならず、同僚の保守言論人からも激しい攻撃にあっている。 今まで繰り返してきた「第二次世界大戦=正義の戦争」の歴史観をひっくり返されたのであるから怒りを買うのも当然であろう。 改めて本書を世に出した著者の勇気には敬意を表したい。
追記:
悲しいかな、著者はやはりアメリカ人、こういう捨て台詞に近い言葉があった。 「大戦中の残虐行為の原動力となった日本の神道は、イスラムの聖戦(ジハード)の思想と多くの点において似通っている」 この台詞の根拠となっている記事があったので見てみたところ、出典はJohn David Lewisなる人間が書いたものであった。
このJohn David Lewisの書いた記事をよく読んでみると、「神道の原理に突き動かされた日本人は何百万という人間を残虐に殺した」などと書いている。 この男もその根拠として何かを参照しているので見てみると、二つあった。
一つはジョン・ダワー著作「敗北を抱きしめて」。 このジョン・ダワーという人間を調べると、ウォール街を占拠せよ!運動を支持し、ノアム・チョムスキーやマイケル・ムーアなどと連名で沖縄の米軍基地建設反対運動を行った(それによって日米の関係を引き裂こうとする)極左であることが分かった。
もう一つは、第二次大戦中に当時の国務長官だったジェームス・バーンズが国務省のアジア専門の役人だったジョン・カーター・ヴィンセントを引用して太平洋戦線で戦うマッカーサー元帥に向けて打った電報とやらであった。 ジョン・カーター・ヴィンセントは神道というものは有害な思想であり、学校や政治の場から完全に除去しなければならない、というようなことが書かれている。 ところで、ジョン・カーター・ヴィンセントは40年代にアメラジア事件で容疑をかけられ、50年代にジョセフ・マッカーシーに告訴されたソ連のスパイ・共産主義者であった。
「貴女は、こともあろうに、これら共産主義者の言葉を参照しているということが分かっていますか?」という突っ込みを入れたところ、こんな返事が返ってきた。
https://twitter.com/diana_west_/status/508949337242882048
いやあ、よく見つけましたねェ!、くらいの意味だろうか。 著者自身の驚いたようだ。 この回答を、私は誤りを認めたものと解釈する。