共和党大会 テッド・クルーズ演説
- 2016.07.23 Saturday
- 16:42
クリーブランドで開催された共和党大会にてドナルド・トランプが正式に共和党の大統領候補として指名された。共和党大会の目玉は当然トランプの指名受諾であるが、注目すべきは第二位に終わり途中撤退したテッド・クルーズの演説であった。
ドナルド・トランプは本大会の演説において、声が大きいだけで中身が無く、哲学的な信念が不確かさで経済や国際情勢に対して無知であることを相変わらずさらけ出した。
「オレ一人だけがこの国を偉大にすることができる!」
「オレは企業が海外に移転するのは許さない!」
「オレは不公正な貿易を許さない!」
「オレは貿易赤字を許さない!」
「オレはバーニー・サンダースの支持者を取り込む!」
「オレたちはLGBTQ達を取り込む!」
トランプは大統領は一人で政策を断行できる独裁者かなにかと勘違いしているのか。トランプは企業活動の自由が経済発展に不可欠であることを知らないのか。トランプは貿易赤字が強い通貨と高い購買力の証左であることを知らないのか。トランプは共産主義者であるサンダースの支持層を狙っているのか。トランプは性別を否定する極左か。
LGBTQのQは"Questioning" = 自分の性的志向は何なのだろうかと疑問を感じている人々のことらしい。今回この言葉をトランプの演説で初めて聞いた人間は多い。
この演説を聞いてトランプを支持した間違いに気づき、じっとりと汗ばんだ人間は多いであろう。
クルーズはトランプの前に演説をすることになった。クルーズの演説はまさしく大統領としての風格に溢れるものであった。
クルーズが打ち出したメッセージは「自由への回帰」である。
教育、医療、税制、インターネット、そして言論において自由を取り戻さなければならない。
信教の自由… あらゆる信仰を持つ人々が良心を追求する自由を守らなければならない。
自らの身と家族の安全を守る自由(銃の保持)を守らなければならない。
そのためには憲法を堅持しなければならない。
そのためには最高裁判事がその地位を濫用して法を解釈するのではなく、憲法の精神に従わなければならない。
中央集権を阻止し、州の権限を保護しなければならない(地方分権)。
大きな政府を拒否しなければならない。
国境守備を強固にしなければならない。
自由によって経済は活性化し、個人は尊厳を得る。
クルーズは呼びかける。
「来る11月の選挙では必ず投票してほしい。自分の良心に従って投票してほしい。我々の自由を守り、憲法に忠実であると信じる候補者に、投票してほしい」
トランプ陣営によるブーイングの嵐が沸き起こったのはこの瞬間であった。クルーズが「トランプこそが大統領にふさわしい!このお方に一票を!」とやらなかったからである。クルーズの演説の最後の部分はほとんどブーイングにかき消された。そしてそこにタイミングを合わせてトランプが会場に登場し、トランプ支持者は「トランプを大統領に!」を連呼。
トランプ陣営は言う。「クルーズは共和党の指名獲得者を支持する誓いを破った。当然の報いだ」と。
だが事前にクルーズの演説原稿を入手して内容を読み、そのうえでクルーズを招待したのは他ならぬ彼らであった。彼らはクルーズが演説を始める数時間前からクルーズに対してトランプ支持を明言するようプレッシャーをかけ始めた。
だがクルーズは屈しなかった。自分自身だけでなく、妻や父親に対しても聞くに堪えない雑言を浴びせたトランプへの支持表明をしないのは人として当然のことであろう。またトランプは今の今まで結局は保守主義を何も理解せずに来ている。保守主義者であるクルーズにとってトランプへの支持表明が変節であると考えられても不思議はない。
クルーズはトランプへの不支持表明をすることもできた。だが共和党の融合を求めるクルーズはそれをしなかった。代わりに「自分の良心に従った投票を」と呼びかけたのである。
指名獲得を逃しながらも共和党内融合を呼びかけるテッド・クルーズを既に指名を獲得したトランプとその支持者達が執拗に攻撃する。民主党候補者であるヒラリー・クリントン一人に照準を合わせなければならない今、この瞬間にである。
大会翌日・支援ボランティアを前に演説するトランプ
「テッドの支援表明なんていらねぇよ」
「テッドなんて誰も気にしちゃいねぇよ」 (19分)
「テッドのオヤジがオズワルド(ケネディ暗殺者)に関係してた話もあるしな」(21分)
共和党は引き裂かれている。似非保守は虚勢を張り、保守本流はがっくりと肩を落としている。
一方民主党はヒラリー・クリントン支持で一致団結している。民主党とリベラルが大勢を占めるメディアによる攻撃が始まるのはこれからである。
当たる確証は無いが、トランプが大統領になる可能性は99%無いと断言する。
左翼オバマの次は左翼クリントンとなるか。そうなれば更なる国家解体が進み、世界は益々不安定になる。
憂鬱な時代は続く。