米大統領選挙 トランプ敗退の様相
- 2016.08.06 Saturday
- 22:55
ドナルド・トランプを担いだ共和党が苦しんでいる。トランプは自らを制御することが出来ない。
失言に次ぐ失言。刃に布着せぬ発言でもなければビジネスマンとしての型破りな発言でもない。
世界最大の国家のリーダーとしての風格など微塵も無く、日々経済や国際情勢への無知をさらけ出している。指名を受けたいまとなっては党内をひとつにまとめ、民主党の罪悪を暴き立てつつ未来への希望を語り、共和党支持者だけでなく無党派層も取り込まなければならない今この時期に、いまだに指名獲得を争ったテッド・クルーズや保守派を攻撃している。
その様子を保守派は反吐がでる思いで見ている。これは想像ではない。アメリカの保守派ラジオ局には多くの視聴者が電話をかけてくる。「いやいやながらトランプに投票する」という人もいれば「絶対にトランプには投票しない」という人もいる。
保守派に関して総じて言えるのは冷めた態度である。絶対にトランプに勝たせたい、という熱意は無い。それどころか、共和党大会までは支持を表明していた人々も、トランプの迷走ぶりに焦りを感じ始めている。
今は8月で選挙は11月。まだまだ情勢が変わる可能性はある。しかし現時点ではどの支持率をとってもクリントンが勝っている。伝統的に共和党の強い州でも民主党が盛り返している。
このままでいけばトランプは地滑り的大敗を喫することになる。
トランプは彗星のように現れた男ではない。90年代から時折大統領候補に立候補しては消え、ついこの間まで民主党の支持者として政治家を陰で動かしてきた人間である。2012年にも立候補し、妙な発言を繰り返しては鳴かず飛ばずで早々に撤退している。
大統領選を見守る人間にとっては何の新鮮味も無い人間なのであるが、なぜか今回は「俺は壁をつくる。そしてそれをメキシコに払わせる!」という一発芸が受けてしまった。今更ながらに人々の記憶力の無さにはあきれるばかりである。
だが所詮は一発芸。問題はこれからである。
主要メディアは指名候補争いの間は概ねトランプを好意的に扱った。保守派のテッド・クルーズを徹底的に無視する一方でトランプには最大限の放送時間を与えた。
その目的はトランプを勝たせるためではない。目的はヒラリー・クリントンを勝利させることである。クリントンにとっての脅威はトランプではない。それはテッド・クルーズである。13歳にして合衆国憲法を暗記し、法曹界でのし上がって政治の世界に入った隙の無いディベートの名手、テッド・クルーズは既に撤退した。
クルーズを排除してトランプという自己制御機能の無い人間をとりあえず共和党のリーダーにしておき、クリントンが指名された後でトランプを始末しようという魂胆である。
8年間に及ぶ左翼オバマ政権による国家破壊を経たアメリカは、更に教条主義的な左翼であるヒラリー・クリントンが政権を取ればもはや後戻りできないほどに変質させられることになろう。
米国民ではなく単に保守主義の勝利を願うばかりの私にしても、誠に憂鬱なる選挙である。