トランプ大統領・施政方針演説2020
- 2020.02.16 Sunday
- 17:29
トランプ大統領の施政方針演説(一般教書演説)が行われた。
トランプ落としの仕掛け人の一人であるナンシー・ペロシ下院議長と握手をせずに演壇に立ったトランプ大統領。そのトランプ大統領をペロシ議長が慣習に則らずに端折って紹介。演説の最後にトランプ大統領が読み上げた原稿のコピーをビリビリと破るペロシ議長。内容以外にもドラマ性に満ちたものであったが、今回のスピーチは逆風の中で確固たる実績を打ち立てたトランプ大統領の自信が伝わってくるものであった。
【経済】
大統領は過去数十年間にもわたる停滞との決別を宣言し、規制撤廃、減税、各国との貿易協定締結により、「うなりをあげるような経済成長」が進行中であると言明する。大統領は経済の復活と活況を呈する市場に言及する。アメリカの将来は明るい。停滞・沈滞・下降の時代は終わった。修辞と言い訳の時代は終わった。
【雇用】
回復を続ける雇用情勢を次々と挙げる。トランプ政権誕生以来、7百万の雇用が創出された。アフリカ系、ヒスパニック系、アジア系の失業率が過去最低となり、アフリカ系の貧困率も過去最低になったこと。高校卒業証書を持たない労働者の失業率が過去最低となったこと。若く低学歴・低スキルな人々が雇用されていること。1千万人もの人々が福祉頼りの生活から脱却したこと。所得が上昇していること。特に低所得層は16%も上昇している。ブルーカラー労働者の大躍進を謳いあげる。
石油とガスの規制撤廃により資源の自給化(energy independence)を果たし、エネルギー産業関連の労働市場は空前の活況を呈している。
ブッシュ、オバマ前政権時代に6万の工場(製造業)が失われたが、トランプ政権では1万2千もの工場が建設された。
企業は戻ってきている!米国は今やアクションの場だ!と喝破する。
【社会主義】
キューバ、ニカラグア、ベネズエラといった米国の裏庭で人々が社会主義に苦しむ国々を挙げ、「社会主義は国を亡ぼす!」とバーニー・サンダースに代表される社会主義との対決姿勢を鮮明にする。
【防衛】
2.2兆ドルという記録的な額の軍事予算を挙げ、アメリカは再び世界に君臨する軍事大国となったことを誇示する。宇宙軍創設の意義とアメリカ第一主義を強調する。一方、NATO同盟諸国へは4千億ドルの拠出増額をさせ、他の同盟国へも軍事拠出を倍増させるなど、タダ乗りをさせない姿勢を明確にする。
【教育】
多くの児童・学生が破綻した「政府の学校」に囚われになっている、とし、成績優秀な学生が学区を超えて自由に学校を選択し学ぶことができるOpportunity Scholarshipsの推進を宣言する。そのスカラシップを受けることになった一人、ジェナイアという少女を紹介。
※公教育を「政府の学校」と呼び、その本質を突いたのは意義深い。
【不法移民】
Catch and release(捕まえては釈放する)を終了させたことを宣言する。不法移民を許容するカリフォルニア州とニューヨーク市を槍玉にあげ、不法移民に対する政府医療援助の禁止を法制化することを議会に求める。
アメリカの移民受入れは能力に基づくものであり、順法精神、経済への貢献、自主独立、価値の維持といった特性を求めるものであると強調する。
壁建設は100マイルが完成し、来年早々には500マイルが完成する計画を示し、選挙公約の目玉が実行されていることを誇る。
【妊娠中絶】
後期中絶(27週から出産まで)の禁止する法律の成立を議会に求める。全ての人の命は神の神聖なる賜物である、と言明する。
【宗教の自由】
アメリカと信仰との歴史的な関係を述べ、公立学校で祈りを捧げる自由と十字架を掲げる自由を守る決意を示す。
【銃を持つ権利】
自分が大統領である限りは、国民が銃を保持する権利は絶対に守る、と宣言する。
【イスラム過激派】
イスラム国の指導者・バグダディやイランのソレイマニ司令官殺害に触れ、「テロリストはアメリカの正義を逃れることはできない」とし、イスラム過激派テロから国を守る決意を表明する。
USA!USA!USA!の大合唱の中、アメリカは人類の歴史上類のない共和国であり、アメリカが偉大性を発揮する時代はこれからやってくるのだと宣言して締めくくる。
全ての内容にもろ手を挙げて賛同するわけではない。巨額の政府インフラ事業や育児休暇制度、環境保護のために世界中に官民で木を植えよう、というような、大きな政府指向の内容もあり、心なしか、そのような場面では一瞬白けた空気が流れたように感じた。
だが全体をとおして非常に明るく、かつ力強く、本来のアメリカが復活しつつある印象を得た。同時に2020年の選挙ではなんとしてもトランプ大統領に再選を果たしてもらいたいという願いを強めた。
規制の上に規制を重ね、増税の上に増税を重ね、金融緩和(規制緩和ではなく金融緩和・・・通貨価値を毀損する政策)のアベノミクスというオママゴトにかまけ、国家の使命を忘れて泥沼にはまる陰鬱たる日本において、非常に精神を高揚させるものであった。