新型コロナウイルス克服、経済再開への道
- 2020.04.26 Sunday
- 20:34
州が独立した権力を持つ米国において、知事の暴走により経済が麻痺する事態となっている。数週間〜数ヵ月前には絶好調な経済の恩恵を受けていた人々が失業に直面し、多くの人々が蓄えの全てを失おうとしている。コロナウイルスに関する情報が徐々に明らかになりつつある中、強圧的なロックダウンや行動制限に対する疑念が広がり、人々の不満が噴出している。ここのところトランプ大統領の発言には経済活動再開へと向かうべく気運を作り出そうとの意思が伺える。
新型コロナウイルスはその名の通り新しいものであり、その実態は未知な部分が多かったが、世界に拡散したウイルスのそれぞれの国での動向により、徐々にその感染力、健康リスク、死亡率が明らかになりつつある。
判断をするための情報が集まりつつある現在、実態不明な時期にはやむを得なかった行動制限を脱すべき時期に来ている。行動制限は経済を破壊し、経済の破壊は医療・健康の破壊につながり、人命を失うことと直結する。これは世界的に見て死亡者数を低く抑えている日本においても言えることである。
米国の予防医学・公共衛生の権威であるデビッド・カッツ氏と疫学の権威であるジョン・イノアニディス氏が経済再開に向けた理性的かつ前向きな提言を発している。その提言のキーワードは集団免疫力である。
Perspectives on the Pandemic | Dr. David L. Katz
このウイルスに対抗するためには二つの方法がある。第一にワクチン導入。第二が集団免疫力である。
ワクチンの導入には8か月から数年の時間がかかり、その効果は保証されていない。その間、行動制限を延々と続けざるを得ず、それによる経済的損失ならびに個人生活の犠牲は計り知れない。我々は集団免疫の確保に向かわなければならない。これはすなわち、全面戦争からターゲットに的を絞った局部攻撃へのウイルスとの戦い方の変更である。
人が一度ウイルスに感染し、克服して免疫力を得る。免疫をもった人間は他者に対してウイルスを感染させることはない。ウイルスの拡散はそこで打ち止めとなる。このような打ち止めが社会のあちこちで起こることで高リスク者への伝染リスクが下がる。これが集団免疫力であり、これを実現することが現状における経済再開への唯一の道である。
新型コロナウイルスが危険を及ぼすのは高齢者であり、限りある医療資源を彼らに向けなければならない。その一方、若年者へのリスクは比較的低い。若く健康な人間を積極的にウイルスと対峙させ、免疫力をつけさせる必要がある。リスク階層別の感染制御及び促進である。
我々は更に正確な情報を得るべく各地域でサンプリング検査をすべきである。ある地域・社会において、ウイルスを持つ人間、ウイルスを持たない人間、そして抗体を持つ人間(一度感染してウイルスを克服した人間)はどの程度いるのか。そのうち、症状がある人間、無い人間はどの程度いるのか。症状がある人間のうち、重度、中度、軽度の人間はどの程度いるのか。それらのうち、回復する人間はどの程度いるのか、そのまま重症化・死亡する人間はどの程度いるのか。こういったデータを更に集め、結果に基づいて公共政策を調整すべきである。
Perspectives on the Pandemic | Dr. John Ioannidis
ジョン・イノアニディス氏も集団免疫の重要性を強調し、リスクの高い領域への注力を提言する。
当初のWHO発表の致死率は3.4%であり、米国内の学界では1〜1.9%が言われたが、今や0.3%程度で季節的なインフルエンザと同等であることが分かってきた。このウイルスによる健康被害のリスクは圧倒的に高齢者にあり、65歳未満の健常者に対するリスクは自動車で通勤する際の交通事故リスクと同等であり、無視してもよいレベルである。
一方、重症化・死亡リスクの高い人々が集まる病院における感染を防がなければならない。感染爆発の主要因は院内感染であり、コロナウイルス患者が医者や看護士に、彼らが他の病気で入院している患者へ、特に高齢患者に感染させ、死に至らしめている。重度のコロナウイルス患者のみが病院に行くべきであり、症状が軽度な患者は行くべきではない。なぜならば、他の要因で入院している患者を危険に晒すだけだからである。
コロナウイルスによる死者とされる人間には、コロナウイルスが主原因で死んだ人間と、他の主原因で死に至ったがコロナウイルスも持っていた、という場合がある。数字だけが一人歩きしているが、今後の精査が必要である。PCR検査(病原体の存在を検知する検査)と抗体検査(抗体の有無を検知する検査)はそれぞれに一長一短があるが、これらを広範囲に投入してより正確な情報を得る必要がある。
ウイルスを退治するには集団免疫力が必要である。老人や健康リスクのある人々をなるべくリスクから遠ざけながら、健康な人々には一定の配慮をしながらウイルスと接触させることによってこの集団免疫力は実現する。そのためには封鎖をしてはならない。無力化されずにウイルスは存在し続け、封鎖をやめた途端に免疫のない人々に感染して高リスク者が発症するだけの結果となる。
学校や商業施設を閉じれば若者が行き場を失い田舎の実家に帰る。彼らは自分らと一緒にウイルスも持ち帰る。親や祖父母といった高リスクな人々を感染させ、重症化させ、死に至らせ、医療を圧迫する。スポーツ大会やコンサートといった高リスクな人々の集まりは安全性が確保されるまでは抑制しながらも、自粛要請を段階的に解除して人々の行動を促し、学校を開けて若い人々の通常の日常を復活させることが必要である。
それによって人々の間に免疫ができ、免疫によってウイルスが無力化され、秋以降の第二波を阻止することができる。
経済か人命か、は無意味な選択である。過去においても、現在においても、未来においても、人命を救うのは経済である。産業革命による爆発的な経済発展を境に人々の寿命は革命的に伸びた。大部分が40代までに死んでいた人間が大部分100歳近くまで生きるようになった。経済を活性化させることが人命救助に直結する。各国が味わった塗炭の苦しみを無駄にせず、経済の再開へ向かうための足がかりとすべき時が来たのである。
【参考1】
Dr David Katz Makes The Case For Herd Immunity Against Covid-19 Rather Than Continuous Lockdown
【参考2】
カッツ博士が推奨するコロナウイルスによる感染・死亡リスク階層別の個人行動・公共政策ガイドライン
https://davidkatzmd.com/wp-content/uploads/2020/04/totalharmminimization-2020-04-08.pdf